近藤萠句集『鐘 Campanella』(龍書房)、栞文は鳥居真里子、その中に、
萠さんはどこか不思議な個性につつまれた女性である。それ故か作品もまた明るく、どこか不思議な余情を漂わせる。気がつくと、彼女の童話的世界に迷い込んでしまった私がいる。(中略)
春よ来い辺野古のジュゴン珊瑚にも
おりいぶの花国家とは自由とは
沖縄忌少女の声が鳩になる
句集『鐘』は絵のない絵本のような趣の一書である。その「鐘」のを大空高く鳴り響かせるのは、私たち読者の想像力の翼に他ならない。
とあった。また、著者「あとがき」には、
この句集は夢から生まれました。病床の麻酔の効いた眠りの中で、カラフルでリアルな夢を見ました。思ってもみなかったことが導き出された感じでした。それは、退院後も小さな鐘の音のように胸の中で響いていました。(中略)
この句集を通して夢の続きの鐘の音に耳を傾けていただけましたら幸いです。
ともあった。集名に因む句は、
真夜中の驟雨かの日のラ・カンパネラ 萠
では、なかろうか。ともあれ、集中より、愚生好みに偏するがいくつかの句を挙げておきたい。
神無月絶滅危惧種黒電話
詩の神はいつも留守がち時雨月
悼 小林星子姉
読経春雨どきやうはるさめラブレター
亀も鳴け木もなけ君を送らむよ
春泥やはないちもんめ一人消え
あぢさゐにあぢさゐのゐてあぢさゐは罪
あげは蝶あくびしたときあが落ちた
夏のバス次の停車は異次元です
黄落の亀かつてます金曜日
メメント・モリいよいよ炎(も)ゆる緋衣草
近藤萠(こんどう・もえ) 1945年、埼玉県生まれ。
撮影・鈴木純一「ビンボウでヘクソで初心忘れずに」↑
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