2015年10月1日木曜日

夏木久「冬薔薇きのふとけふを交配し」(『笠東クロニクル』)・・・



夏木久第二句集『笠東クロニクル』(夏気球舎)。前回、本年3月刊の第一句集『神器に薔薇を』は書下ろし、今度の句集は2011年~2014年から。加えて、今年度現代俳句協会賞年度賞応募作品など、約600余句からなる手作り句集である。多くは「連衆」「豈」などに発表された句を収載している。
集中に、「孤島構想(ガラパゴスデザイン」と題された「2015現代俳句協会年度賞応募作・30句」が含まれていたので、改めて、その応募作を読み直したのである(もちろん、選考終了までは全編名前は伏せてあった)。
愚生は、今年度、年度賞選考委員になって初めての選考であった。相対的ではあるが、評価は204編の内の予選20編に選ぼうかどうか迷った一編であった〈一読の折には残すべき作品として応募作の番号に○の印を付けていた)。いま読み返してみると、鉛筆で全句のうち、○が四句ほど付してある。おおむね散文的な調子が全体の句の力を減じている印象だった(あるいは、一句の答えが句の中に用意されてしまっていて惜しいと考えた)。もう少しはっきりとした断定を用いて読者が納得させられる答えならばそれもいいと思うが、一句を立たせる鮮烈さに少し及んでいない印象だった(作品としての句的現実は、やはり、古い例えだが、言いおおせて何かあると思わせなければなかなか上手くいかないようだ)。
ブログタイトルにあげた句でも下五を「交配す」とでも表現すれば、また、趣が変わって、別の印象が鮮明に生じると思われる(もちろん、作者や読者の志向があるから何とも言えないが・・・)、。句の伝達力が増したのではなかろうか、などと勝手なことを考えてみるのだ。
ともあれ、夏木久(なつき・きゅう)は、九州に在って、今後、さらに期待されている俳人の一人である。

  抱へても抱いても月の光かな      久

そのほか、いくつか挙げておこう。

  天金に秋の鱗粉匂ひけり
  ばんかかなそのとらんぷをとりかねて
  ガンダムが八方ふめばはなふぶき
  ながつきのたはをくはえるえれふあんと
  この星に閉じ込められて十三夜
  ももすももすこしいたんでいてすてき
  空蝉の闇の入れ替へ戰最中
  そらいちまいさみしくしたてうさぎかふ
  最後まで海を引き摺り冬怒涛
  いくつかの角を曲がつてねこじゃらし




  
  

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