2017年2月16日木曜日

倉阪鬼一郎「野の果ての砂に埋もれしハープにて風は奏でる始まりのうた」(『世界の終わり/始まり]』・・



倉阪鬼一郎歌集『世界の終わり/始まり』(書肆侃侃房)は著者三十年ぶりの第二歌集だという。愚生は、倉阪鬼一郎が短歌を作っていたなどとはまったく知らなかった。「あとがき」には、

 もともとは短歌を作っていて、俳句へと転向するかたちだったのです。学生時代は早稲田大学の幻想文学会に所属し、幻想短歌会という分科会を主宰していました。(中略)
一九八九年に第一歌集『日蝕の鷹、月蝕の蛇』(幻想文学会出版局)を上梓しました。(中略)
こうしておもむろに短歌を再開し、いまここにようやく成ったのが三十年ぶりの第二歌集というわけです。

とある。 以下のことも愚生は初めて知るのだが、趣味はマラソン、トライアスロン、囲碁、将棋、油絵などというから、怪しい世界の人という印象ではなく、けっこう肉体派かも知れない。因みに本歌集の表紙絵も倉阪鬼一郎だ。
また、オリジナル著書は130冊を超えたという。確か彼が「豈」同人になった頃から専業作家の道を歩んでいる。そのころの小説はホラーで、これでもか、というほど全く救いのない特異な小説だった。もう20年近く前のことだ。
幾つかの歌を以下に挙げておこう。

 キッズスペースで夜もあお向けにされている碧すぎる目の人形たちよ   鬼一郎
 眠れない深夜バスのつれずれに想う世界の終わり/始まり
 風の門は閉った それからを生きるペンギンなど
 肉は駄目だがカツカレーは食すわたしは死ぬまでイデアを食べて 
 見える 本当は呪いがかかっている穏やかな枝ぶりの松ここからは見える
 決定的なことは常に起きてしまっているから海の夕焼があんなにも赤い



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