2021年2月9日火曜日

池田澄子「また此処で思い出したりして薄氷」(「読売新聞」2月9日・朝刊より)・・・

 

 「読売新聞」2月9日朝刊 「読売文学賞の人びと」にインタビュー記事が掲載されている。そして、何より昨日は第21回「現代俳句大賞」(現代俳句協会賞)を受賞したことも伝えられた(実は先々日に、「豈」発行人・筑紫磐井から、池田澄子ダブル受賞、残るは〇〇賞と〇〇賞・・・と内々に知らせを頂いていたところだった)。受賞歴でいえば、師の三橋敏雄を超えたことになる。俳句の時代も、ようやく、現代仮名遣い、口語文脈ありの俳人を押し上げた、と言っていいかも知れない。ある人は、「短歌で口語短歌の道を大きく切り開いたのは俵万智、俳句でそれをなしたのは池田澄子・・・」と言っていたが、時代の風がようやく追いついたのだろう。版元の朔出版・鈴木忍のフェイスブック記事によると、


 ●文語と口語を駆使した多彩な表現方法で、独自の俳句世界を確立されたこと。

 ●日常のささやかな題材から、戦争や生死など重いテーマを詠み、深い俳句世界を示していること。

 ●そして、親しみやすい語り口で多くのファンを魅了し、特に若い世代への俳句普及に貢献したことも大きな授賞理由です。

 ●もちろん、平易で説得力ある文章も!


 と、あった。とにかく、重ねてオメデトウ!!ございます。読売新聞の記事中の句を以下に再掲しよう。


  じゃんけんで負けて蛍に生まれたの       澄子

  此の世の此処の此の部屋の冬灯

  こころ此処に在りて涼しや此処は何処

  春寒の夜更けに亡師と目が合いぬ

  あっ彼は此の世にいないんだった葉ざくら

  


  

★閑話休題・・・佐々木六戈「悪意でもなく憎悪でもなくピラカンサ」(「艸 くさかんむり」第4号)・・・

 その跋の後半に、


●再びの緊急事態宣言が発出された。公共施設は閉じられてしまった。句会は閉め出された。不要不急ということか。●ウイルスは悪を成そうととして現れたのではない。却って善をもたらすだろう。人類史的に言えばそうにちがいない。我々の遺伝子の半分はウイルス由来である。その御蔭で人類は生殖が可能になっている。歌の半分である五七五の遺伝子の総体は俳句と呼ばれるゲノムなのである。そのゲノムのおよそ三分一は季語というウイルスを内在させている。眼前の風景がまた違って見える。季のトーテムが人に反省を強いているからである。


 とあった。


  われをくぐりて手袋を裏返す       六戈

  新しき手帖に記す彼是(あれこれ)も予定に如かず扨(さて)も其(そ)の後(のち)



       撮影・鈴木純一「ぷっくりと鶲の尉も春のふん」↑

0 件のコメント:

コメントを投稿