2022年3月24日木曜日

すずき巴里「ひらがなの手紙をもらふ春をもらふ」(『櫂をこそ』)・・


 

 すずき巴里第2句集『櫂をこそ』(本阿弥書店)、著者「あとがき」の中に、


 (前略)私事では、三十五歳で設立した保育園を三十周年の折に息子夫婦に継承、順調な歩みにより創立四十周年を祝うことが出来ました。

 また、保護司拝命十年の任期も無事務めあげ安堵致しました。

 第二句集を編むにあたり、三六二句を並べますと、これまでに送り出した多くの園児たちのこと、更生に寄り添った対象者のこと、俳句仲間のこと、そして家族たちのあれこれが懐かしく皆々、幸多きことを祈るばかりです。


 とあった。集名に因む句は、「ろんど」三代目主宰を継承した折の、


   櫂をこそもて月光に漕ぎ出でな       巴里 


である。ともあれ、愚生好みに偏するが、集中より、いくつかの句を挙げておきたい。


   憲法記念日を園児に問はれたる

   兄に「信」姉の名に「和」や終戦日

   凍て星の数を尽くしてしづかな木

   春の星大きくマララ・ユスフザイ

   春昼の地下鉄パリへ行きさうな

   望郷や風花消えてまた湧きて

   野菊の墓までを素秋の川渡る

   サンタクロース鳥居おさむを出してみよ

   僕らの夏私らの夏消えて夏

      松山東子さんとお別れ

   その先の花野に行つてしまはれし

   枯木星星の迷子を預かり中

   

 すずき巴里(すずき・ぱり) 1942年、中国南昌市生まれ。


★閑話休題・・現代俳句協会幹事会「ロシアのウクライナへの侵攻についての声明」・・


 現代俳句協会幹事会は、去る3月21日、質的には全く違うが、昭和36年の現代俳句協会からの分裂、俳人協会の創立の際に声明を発して以来2度目、60年ぶりの声明を出した。終日、リモートによる議論の末に決定したという。文中に「私たちはウクライナ、ロシアに俳句を通して多くの友人がおり、今後も絆を大切にしていきたい」とあるので、連絡のとれるウクライナ・ロシアの俳句愛好家の皆さんに直接文書メールなどで是非届けてほしいと思う。


   ロシアのウクライナへの侵攻についての声明

  ロシアによるウクライナへの侵攻は、ウクライナの主権と領土を侵害するものです。まして核戦力部隊の動員にまで言及したことは、人類として越えてはいけない一線に踏み込んでおり、強く非難します。 

人びとの生命、財産が損なわれ、表現の自由や活動の自由が著しく阻害され、深刻な危機に瀕している現状を憂い、一刻も早く武力の行使が停止されることを切に求めます。

  私たちはウクライナ、ロシアに俳句を通して多くの友人がおり、今後も絆を大切にしていきたいと思っています。すべての人びとが生命と生活の安全を保障され、不当な差別や迫害を受けることがないよう願ってやみません。

        2022321

   現代俳句協会幹事会



     撮影・鈴木純一「コブシたち今年も全員野球ですな」↑

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