2022年5月5日木曜日

髙柳克弘「戦争も退屈も嫌白日傘」(『涼しき無』)・・・

  


 髙柳克弘第3句集『涼しき無』(ふらんす堂)、著者「あとがき」に、


(前略)こ句集に主題の明確な作が多いのは、私なりの挑戦だ。とはいえ、作者の意図は脇に置いて、読者の方には、自由に鑑賞していただければ嬉しい。たとえば子供を詠んだ句が多いが、この句集に出てくる子供は、私の息子でもあり、戦場のみなしごでもあり、安寿厨子王でもあり、あるいは私自身でもあるだろう。


 と記されている。また、集名に因む句は、


   子にはほほゑむ母にすべては涼しき無      克弘


  であろう。ともあれ、集中より愚生好みに偏するが、いくつかの句を以下に挙げておこう。


   本書くに読む本の数柚子の花

   街の時間原野の時間鳥渡る

   噴水や団結を説くビラ浮ける

   ふところに拳銃欲しき秋の暮

   電脳の妖精の国冬籠

   魔術なきこの世に奇術冬灯

   盤上の兵はひるまず揚雲雀

   機械は人に人は朧に近づく夜

   弾丸もヘアピンも鉄夏の月

   桃・煙草ゾンビの方が楽しさう

   年忘れ毒もて制しきれぬ毒

   ぬぐふものなくて拳や米こぼす

   水草生ふ死ぬならばその腕にこそ

   紙雛換気の風に倒れけり

   ハンカチを敷くやひとりの花筵

   

 髙柳克弘(たかやなぎ・かつひろ) 1980年、静岡県浜松市生まれ。



       撮影・中西ひろ美「万感の花咲き終へし緑かな」↑

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