2022年8月22日月曜日

星野高士「川沿いを行く行年の靴の音」(『渾沌』)・・


  星野高士第6句集『渾沌』(深夜叢書社)、その帯には、


   海市たつ辺りに波の音もなし

 第五句集『残響』から八年、清新な抒情を鮮やかに掬う俳人・星野高士が円熟を深めながら拓く新境地ーー。

 〈渾沌〉は可能性の揺籃ともいえる。然り、私たちは渾沌の世に、明晰かつ洒脱な精神で紡がれた三八七句と出会うだろう。


 とある。また、集名に因む句は、


  渾沌の世も平然とサングラス      高士


 であろう。そして、著者「あとがき」には、


 令和二年に「玉藻」は創刊九十周年を迎えることができた。折しも新型コロナウイルスのパンデミックの影響で、予定していた行事も中止や延期を余儀なくなれた。(中略)

 そして令和四年は「玉藻」創刊千四百号を控えている。

 何とかこの渾沌とした世の中を乗り越え、元の日常が戻ることを願うと同時に、この句集を少しでもお読みいただければ、私にとって最高の幸せである。


と記されている。ともあれ、以下に愚生好みになるが、いくつかの句を挙げておきたい。


  寒鯉や水の重さを見せる底 

  春の野の端は果てとは思はざる 

  草笛の天与の音色とぎれざる

  春泥に落日の幅ありにけり

  中天に近づく孕雀かな

  仮小屋に仮の土間あり神の留守

  初夢を見たくて枕新しく

  熊穴に入る山脈をなさぬ山

  摘草の帰りの電車よく揺るる

  砂浜に踏まぬ砂ある余寒かな

  晩涼やバス待つときも山仰ぐ

  メーデーに令和の夜明けなどはなく

  箱庭にあるかなきかの昼の翳

  紅葉且つ散る月山はどこも神

  オリンピック玉藻九十年今年


 星野高士(ほしの・たかし) 昭和27年、鎌倉市生まれ。



       撮影・鈴木純一「なつあかね夏への扉あかねども」↑

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