句集『相聞』(角川書店)の著者・岩岡中正は露けしの人。露けしの句が目立つ。当然ながら露に関しての句は収録句462句のなかでも最多の季詞ではなかろうか。ざっと数えて約6%、30句近い。それは、たぶん淋しさがもたらしている。「さびしさをあるじなるべし」(芭蕉)とした詩歌の道である。
秋時雨淋しさは山越えてくる 中正
である。
三月三日 水俣川雛流し
わが流離ここにはじまる雛流し
この句は巻尾の、
水底に海霊(うなだま)
の宮雛流す
一炊の夢に雛を流しけり
の句につながっている。句姿の正しい句群だ。
水仙に明治は高く香りけり
その奥の後生の桜見にゆかな
神の手をこぼれて滝の落つるなり
花仰ぐ文学にまだ遠くゐて
歩兵たりしを冬草の青々と
冒頭に露けしの人と言ったので(もっと言えば露けしの俳人格)、最後にそれらのいくつかの句を挙げておきたい。
水音に二三歩行きて露けしや
夢見しことも忘れて露けしや
草は露人はことばをこぼしけり
聖堂は祈りのかたち露けしや
九月八日~九日 グリーンピア南阿蘇
わが身より離るる一語露けしや
ルリマツリ↑
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