2017年12月28日木曜日
鳥井保和「目頭を押さへ水洟すすりをり」(『星戀』)・・
鳥井保和第4句集『星戀』(本阿弥書店)、集名は、
星戀の冴ゆる一等誓子星 保和
きさらぎの星戀の星誓子星
に因む。誓子星とは天狼星、シリウスのことである。『星戀』は、今年7月に中公文庫で、「星戀」以後、随筆「星」を補って、新字新かな使いで、読みやすく復刻版が出版されたから、山口誓子(俳句)・野尻泡影(随筆)共著でご存知の方も多いだろう。
誓子晩年の弟子である鳥井保和は、「あとがき」に以下のように記している。
(前略)そして誓子の句碑巡り(全国に二○一基)を生涯の目標として、これからも誓子の聲咳に接した最後の一人になるまで「天狼」の誓子の俳句精神を継いでゆきたく思っている。
ところで『星戀』を愚生の近くにある府中市立図書館で検索したら、昭和30年発行の中央公論社の新書版のものもヒットした。早速借りて開いたら(写真下のように)、扉に誓子特有の文字で、
星恋のまたひとゝせのはじめの夜 誓子
とあった。
鳥井保和の『星戀』は多くが旅吟で占められている。従って帯の自選十二句をみてもその通りになっている。誓子の『星戀』は一月から十二月に別れ、旅先で詠まれているが、様々な星詠みに収斂されている。一月から十二月まで、泡影の随筆もその月々に合わされている。
ともあれ、愚生は帯の句とは別に、誓子の弟子らしく誓子忌を詠んだものと、いささかの愚生の好みよって、いくつかを以下に挙げておきたい。
〈山の井は噴きて溢れてとどまらず 誓子〉の句碑あれば
山の井の溢る蹲踞余花明り 保和
誓子忌の天満星(あまみつほし)の朧なる
なんぢやもんぢやあんにやもんにやの花涼し
日に風に汚れてゐたる波の花
夜も白き雲の居座る旱星
葉の色に透くる小さき蝸牛
山脈の黒々として冬満月
誓子の星恋の句が記された新書版と最近復刻された文庫版↑
鳥井保和(とりい・やすかず)、昭和27年、和歌山県海南市生まれ。
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