武馬久仁裕『ある晴れた日、ポルトガル』(SHIMAUMA PURINT)、挟み込まれた便りには、「興に乗ってこのような物を作ってみました」とあった。
文庫本サイズの36ページほどのフルカラー印刷で瀟洒な作り。武馬久仁裕の句に、エッセイ、背景の写真も絵も、たぶん彼のものだ。写俳亭の伊丹三樹彦に先例があるが、実に多彩で、旅でのものも多く、醸し出す愉しさからいえば、武馬の本書に軍配が上がるかも知れない。一例をあげておくと、左ページに「七月の岬存在証明書」の句が「Cabo da Roka」の写真に白抜き文字で入り、右には写真の下に、
ユーラシア大陸最西端、ロカ岬に立った。碑には「ここに地終り海始まる」とある。かつて、わが師、小川双々子は「月明の甘蔗畑に詩は棄つべし」と詠った。私は、眼下の大西洋を見つめながら、自分の俳句のことを考えた。
としるされている。あるいはまた、
アゲタの町は、傘の町。
町中、色とりどりの傘が道の上に浮かんでいる。
昔見た「シェルブールの雨傘」のカラフルな傘の群舞を思い出した。あれは、上から撮られていたが。
カトリーヌ・ドヌーブは美しかった。
燃えつきた男女バスコダガマ通り
誰だろうポストに恋文入れたのは
軋轢の果てに昼顔咲いている
恋すればレールを踏んで歩く街
曖昧な終着駅に光あれ
fadの夜やがて深紅の話する
武馬久仁裕(ぶま・くにひろ) 1948年愛知県生まれ。
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