2018年12月18日火曜日
高山れおな「中年や消えたき時の秋昼寝」(『冬の旅、夏の夢』)・・・
高山れおな第四句集『冬の旅、夏の夢』(朔出版)、装幀は日下潤一(組版・装画も)。奥付前のページに、本著使用の用紙、書体、また、通常版とは別にアビノノコの手製本布装の限定版44部(非売品)があることが記されている。高山れおなの若き20代の日、「俳句空間」(弘栄堂書店版)に、作品10句をもって投稿する新鋭瀾に登場した時、すでに大人ぶりの見事な有季定型の句作りをしていた著者の今回の句集もまた、期待にたがわぬ句姿の正しい句が並んでいる。「後記」に、
□「我俳諧に遊ぶ事凡(およそ)五十有余年、今齢七旬になんなん(原文は踊り字)とす。いまだ自得のはいかいをせず」といふのは、『桃李』の几董の序文草稿に引かれた蕪村の発言で、昔からなぜか好きな言葉だ。当方はちやうど齢五旬を閲したところ。当面は遠心力に身を任せて「いまだ自得のはいかいをせず」の気分を維持してゆきたい。
と、記している。今回、改めて驚き思ったことは、彼が毎年、加藤郁乎忌を修して数句を献じていることだった。例えば、
夏の夢 没後一年
へゞれけの大カトー忌の薄暑かな
ブレボケアレ 没後二年
郁乎忌やブレボケアレの尿(ゆまり)して
ハオ 没後三年
我が汗の月並臭を好(ハオ)と思ふ
今どきの句集には珍しく、どのページから読んでも、それぞれの趣向があり、楽しませてくれる。ともあれ、いくつかの句を以下に挙げておこう。
夏雲走る〈町へ(エス・テン・ポリン)〉そこへ天降(あも)る
〈あはれにすごげ〉須磨のガストといふ処
*括弧内は源氏物語「須磨」より。
歌麿《歌まくら》
灯火親し艶本(ゑほん)の馬鹿のつまびらか
変ロ短調的秋だticktackさよなら倫敦
鹿島社の武神タケミカヅチが鹿に乗り、
御蓋山に降臨したのが春日社の起こり。
日本中デコトラ走る建国日
夜を寒み乱声(らんじやう)つひになきさけぶ
同午後十一時 還幸の儀
御子神(みこ)送る塵の我らや息白く
鴨・海老・豚みな死んでゐる皆で囲む
百千鳥百千の胸の火を思ふ
蝶発ちて青い地球に影は落つ
穢土俳諧歳時記全て憶ひ出なり曝す
仁平氏、「二人姓名詠込句」と題し、〈鷹病(たかや)まれオナニー尽(つ)くし晩成(ばんせい)す〉/他の句、「週刊俳句」にて披露ありければ、返し。
弑(しい)されし新(にひ)ラマ猿(さる)か十幾矢(とをいくや)
ハイクエンジン
月冷式俳句内燃機関(ハイクエンジン)の虚航を嘉(よみ)す
高山れおな(たかやま・れおな) 1968年7月7日、茨城県日立市生まれ。
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