2018年12月29日土曜日
藤埜まさ志「人間紀の地層は瓦礫月冴ゆる」(『木霊』)・・
藤埜まさ志句集『木霊』(角川書店)、横澤放川の帯文には、
自然から人事に到るまでの熟成された洞察力とそれを一詩にもたらす活写力。
木の精を噴きて大榾燃え始む
単に木精からの発想ではない。存在物の実相に見入っての至妙の一句。
永らく「萬緑」の運営にも貢献してきた中村草田男門の代表作家である。
と惹句されている。直接の師は、奈良文夫らしい。巻尾の句は、
奈良文夫師逝去
先生の巨き亡骸星冴ゆる
である。著者「あとがき」には、
『木霊(こだま)』は私の第三句集である。第二句集『火群(ほむら)』以降の平成二十五年後半から平成三十年前半の五年間の作品を収めた。(中略)
これで『土塊(つちくれ)』『火群(ほむら)』『木霊(こだま)』と、土星、火星、木星が揃った。五星まで残るは水星と金星。その成就を果たして天命が許してくれるかどうか。
この句集を、奈良文夫先生はじめ、生涯を「萬緑」に捧げてこられた諸先輩方と、「森の座」を中心となって支えておられる方々に、感謝をもって捧げたいと思う。
と記してある。ともあれ、以下に、愚生の好みに偏するがいくつかの句をあげておきたい。
慰霊行は天皇(すめら)の誠春の星 まさ志
大小の無き万国旗青嵐
枯木立付け火するかの大落暉
「比丘尼ころがし」越えてなほ坂夏の雲
帰還船名聞かず仕舞ひや秋の星
巨人草田男全句一巻蜃楼(かひやぐら)
軍馬その帰還は聞かず枯野原
一つ碑に艦の忌友の忌南風吹く
松の葉に耀ふ雫喜雨亭忌
藤埜まさ志(ふじの・まさし) 昭和17年、大阪市生まれ。
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