2019年1月18日金曜日

谷佳紀「愛は消えてもそこはまぁ紅葉です」(「つぐみ」1月号より)・・



 「つぐみ」1月号(編集発行・津波古江津)、先に谷佳紀の訃報に接したと言ったが、「つぐみ」今号に、文字通り遺稿となった俳句と花谷清句集『球殻』の句集評「句集眼鏡(5)」が掲載されている。その評文のなかに、

 「上手い」とここで言うとき、言葉の扱いに慣れている故の、心情や体感の薄さを思いつつも褒めざるをえないような作品、表面はキラキラ輝きお化粧上手だが、作者の気持ちの動きがはっきりしない表現を指すのだが、それとは逆で、意識とか眼という知の働かせかたに集中し、言葉をそれらと明確につなげようという思いの強さを感じた。

と真っ当に論じている。また、今号「編集後記」には、

 「つぐみ」の仲間としてともに研鑽し、俳句の大先輩として尊敬もし頼りにもしてきた谷佳紀が突然他界したことをこの新年号でお知らせするのは痛恨の極みとしか言いようがない。言葉を失っている。
 今号の〈俳句&エッセイ〉と5回目となる〈句集眼鏡〉が遺稿になってしまった。「もう僕には書くことがないよ」と口癖のように言いながら「つぐみ」への協力を惜しまなかった彼の言葉が耳元を離れない。

 と哀悼が記されてあった。愚生は若き日、縁あって渋谷のオニババこと多賀芳子宅での句会で数年間一緒にさせてもらった。当時から谷佳紀調とでもいうのか、独自の文体をもって俳句を作っておられた。ご冥福を祈る。愚生が「つぐみ」今号の「俳句交流」に「つぐみに捧ぐ」折句7句を寄稿させてもらったのも不思議な縁というべきか。ともあれ、以下に一人一句と愚生の駄句を・・

  象眠る象舎に蒼き冬灯          渡辺テル
  羊雲ベルマートはKiOSKは隣      わたなべ柊
        壁ノ女 褪セテ敗レテ 咳ヲシテ     渡 七八 
  しゃこばさぼてん不合格なら尚よろしい  有田莉多
  冴返るトロイの木馬吾を囲み       安藤 靖
  新年へ太陽一気にかけ昇る        伊那 宏
  漆黒の皮手袋の細き文字         井上広美
  越後路の静かに暮れて穭かな       鬼形瑞枝
  この世の落ち葉こぶしの置き所    小ノ寺いさむ   
  足音も姿も消える枯木山      楽樹(がくじゅ)
  紅葉に隠れ石は石のままの夕焼       谷佳紀(遺稿)
  逝く年のごうごう風の音がする      津野丘陽
  どこからが死かさざんかさざんか    津波古江津
  裸木をなぞる空が生まれる       夏目るんり
  藜群れ恋猫横丁滅びけり         西野洋司
  冬のしゃぼん玉異形細胞ひそむ      蓮沼明子
  榠櫨の実奇妙な時間だと思う       平田 薫
  新生の壮気ただよふ老いの春       藤原夢幻
  カップコーヒー手に女の冬日かな     八田堀京
  飛び出した赤い固まり冬の山      らふ亜沙弥
  美(み)ひとつのつぐのう鳥をつぐりたる 大井恒行




★閑話休題・・「Toriino(トリーノ)」(日本野鳥の会)冬号・・・


「トリーノ」(日本野鳥の会)という季刊雑誌がある。一流の写真家の写真や著名人のエッセイが魅力。「ビジュアルフリーマガジン」とあって、愚生は府中中央図書館に行ったときにいただいている。今号の「自然が織りなす4つの楽章」の写真は入江泰吉、植田正治、川田喜久治、藤原新也、星野道夫。対談は佐治晴夫×柳生博。季節の野鳥(冬)はオシドリであった。
 

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