死者たちの成らざる声や雪月花 恒行
の本歌が収められている。
死ぬことは〈言(こと)〉切るること使者たちの遂に成らざる声想ふべし 正紀
が、そうだ。エッセイのタイトルにしたが、編集部は、最初、これがタイトルだとは思われなかったらしい。タイトルを付すよう求められた。愚生は、本歌の作者だけにはわかるだろう、と思い、この献上一句をタイトルにしておいたのだった。
ともあれ、本誌一月同号より、いくつかの彼の歌と愚生の句を挙げておきたい。
独り居のしづけき庭をよぎりゆく猫あり初日に毛をひからせて 正紀
褻の食を済ませて施設の妻訪へりきのふのごとくをととひのごとく
これの世のすこし外(はづ)れてゐる妻を車椅子にて乗せ初日に温む
手を洗ふときいつまでも石鹸をこねこねこねこねこねまはす妻
山の端に落暉しづみ果つるまで見てをり余命などおもひつつ
愚生の駄句は、
一月はすでに汚れり香港革命 恒行
に始まり、
一月の神は知らずよ悉皆草木
で終る10句である。
桑原正紀(くわばら・まさき) 1948年、広島県三次市生まれ。
撮影・一読者より 玉川上水 ↑
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