「ほたる通信」Ⅱ 2019・12《88》最終号、福家登志子(ふけとしこ)の葉書通信である。
さてこの通信、めでたく八十八になったところで終りにしたい。今迄のお付き合い有難うございました。
とある。そのほかに、以下のようなことも書かれている。
俳句における文法の指摘が厳しくなってきた。歳時記の例句の取り消しということも起きている。(中略)
平成十五年出版の『新版 角川俳句大歳時記)を改訂するとの連絡。詳細はまだ不明だが季語解説を改稿せよとのことである。例句の見直しも云々とある。新しい作品が取り上げられるのはいいが、こ文法上の問題から消される作品も出てくることだろう。髙柳克弘著『蕉門の一句』の中に〈私たちは文法のために俳句を読み、作っているのだろうか?答えは否〉のくだりがあった。私はこちらに納得する。
同感である。ともあれ、以下に通信のその他の句を挙げておこう。
綿虫に
猿の腰掛石ころを載せてある
菊の匂うて腓返りの治まって
切羽つまつて冬たんぽぽへ屈む
先生を見たかと綿虫に問うて
顏描いてみたきと蕪撫でながら
「船団も終刊するという。お疲れさまでした。
★閑話休題・・・堀田京子作・味戸ケイコ絵『ばばちゃんのひとり誕生日』(コールサック社)・・・
葉書通信・88と、ばばちゃん・77のゾロ目つながりで・・・冒頭の数行から、幾行かを以下に引用しよう。たくさん読んでみたくなった人は、版元に直接お求め下さい。
わたしのあだなはばばちゃんです。
わたしをばばちゃんと呼(よ)んでくださいね。
きょうはばばちゃんの77回(かい)めの誕生日(たんじょうび)。
ひとりでむかえる誕生日(たんじょうび)です。
(中略)
亡(な)くなった夫(おっと)の写真(しゃしん)を、
ケーキのとなりにそっとおきました。
(中略)
ばばちゃんは28歳(さい)になり、
あかちゃんをさずかりました。
生(う)まれてきたいとしいわが娘(むすめ)、
お父(とう)さん似(に)のあかちゃん。
(中略)
しかしセピア色(いろ)した写真(しゃしん)のなかで
夫(おっと)はいつもほほえんでいます。
「あなたのおかげで今(いま)もしあわせです」と、
ばばちゃんはつぶやきました。
ねこのミイヤはざぶとんのうえでまるくなっています。
ばばちゃんはきづきました。
「わたしはひとりではない」と。
(中略)
ばばちゃんは夫(おっと)の写真(しゃしん)に手(て)をあわせ、
ワイングラスをりょう手(て)に、おおきいこえで
「かんぱい」
ケーキをいただきながら、ほろよいきぶんで
「海(うみ)の歌(うた)」をうたいました。(後略)
堀田京子(ほった・きょうこ)1944年、群馬県生まれ。
味戸ケイコ(あじと・けいこ) 1943年、北海道生まれ。
撮影・鈴木純一 ↑
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