眞矢ひろみ第一句集『箱庭の夜』(ふらんす堂)、帯文は、ディヴィット・バーレイ。英文に訳文が付されている。ここでは(日本語訳のみを記す)、
「箱庭の夜」は、読者をある私的な王国に誘います。―眞矢ひろみ―の世界は影と記憶で形作られ、創造力で高められ虹によって輝いています。各々の俳句には訝しげで少々取り憑かれたような趣もありますが、人生を送る上での実体験や高野山からドナウ川まで及ぶ具体的な地理環境に裏打ちされたものです。伝統的な暗示の手法や現代の口語をもちいながら、思案と思いがけない遊びの世界を繰り広げ、読者を楽しませてくれます。
とある。あるいはまた、著者「あとがき」に、
この句集を「箱庭の夜」と名付けた。様々なもの、思い、言葉を紡ぐ俳句創作の場を〈極私的〉な箱庭に擬し、三百の句を自選して四章に区分した。章立てはジョン・コルトレーンのアルバム「至上の愛(A Love Supreme)」を参考にした。ある手法等を認め、試行を決め、追求し、終わりに人知を超えたものに感謝、賛美する。ジャンルを問わず、あらゆる作家にとって普通の過程、道筋ではないかと思う。(中略)また、句集編纂においては、記憶の保存を第一義とし、作成時の文体を尊重して口語文語・かな遣いを句によって使い分けたままとした。
と記されている。また、集名に因む箱庭の句は、
箱庭に息吹き居れば初雪来 ひろみ
大袈裟なことばかり箱庭の夜
である。ともあれ、愚生好みに偏するが、以下にいくつかの句を挙げておきたい。
蒼天をピアノに映し卒業す
悼 金子兜太
「やあ失敬」と朧月夜を後にせり
文学は下駄を履かぬか重信忌
幾千代の腐乱の裔や白牡丹
ゐることを禍津日としてかげろへる
暗黒や白玉歪むあたりより
悼 澤田和弥
かげろふの無方無縁の海に翔ぶ
愛国を語るJK夢違え
瑠璃天は御霊に狭し揚雲雀
春の宵おひねりが飛ぶ空爆も
八月の愛国たるを違勅とす
ぼうたんの揺るるは虐殺プロトコル
冬の日の歪むあたりを行かむとす
眞矢ひろみ(まや・ひろみ)1956年、札幌生まれ。
撮影・芽夢野うのき ↑
撮影・鈴木純一「連翹や脱構築を座して待つ」↑
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