2021年7月30日金曜日

豊田すずめ「終日のステテコ敗戦記念の日」(『俳句の杜 2021 精選アンソロジー』より)・・・


 『俳句の杜 2021 精選アンソロジー』(本阿弥書店)、帯の惹句に、「今この季節/今この出会い/再びない機縁/結びつけるもの/時が磨き上げた/充実の俳句世界//16人の作家による100句と書き下ろしエッセ―を収録 」とある。

 愚生に恵まれたのは、50年以上の友人である(俳人ではない)T・Mから、「近所の居酒屋の呑み友だち、と言っても大先輩」の方が収載されているので、と送ってくれたのだ。俳号・豊田すずめ、いかにも俳諧的な号なのだが、句歴には、「や」→「わわわ句会」(三輪初子指導)とあるではないか。袖すり合うも他生の縁どころか、けっこう縁は深いらしい。「や」はもとはといえば、辻桃子主宰「童子」を飛び出した方々が創刊した俳句雑誌である。愚生は、初期の「童子」には、若輩ながら、短いエッセイを連載させてもらったこともあり、なかなかお世話になった。もちろん「や」には創刊時から親しくさせていただいている。また、豊田すずめの書下ろしのエッセーには「木村功の付き人時代」とあって、愚生が過した3年弱の京都時代を思い起こさせた(愚生は、アルバイトで大映の小道具係やエキストラだったが)。とにかく、愚生好みになるが、句をいくつか挙げておこう。


  福笑ひいちばん笑ふ人あはれ       すずめ

  陽炎や世間の見えぬ眼鏡拭く

  礼状が恋文になる桜東風

  無頼派になれぬままなり麦藁帽

  白絣鎌倉文士駅舎前

  傷物のパナマ目深にアルカポネ

  カマキリが通りますからお静かに

  一葉や頭痛・肩こり・茸飯

  立秋の洲崎玉の井北千住

  葉鶏頭鬱の字を見て鬱になる

  開戦日ころり虫歯の抜け落ちる


 せっかくだから、以下には、本アンソロジーから、愚生の知人や現代俳句協会関係の方の一人一句を挙げておきたい。


  人類忌献花のごとき時計草      石原 明

  花冷えの裳が見え木花開耶姫     伍賀稚子 

  前も後も花の息して淋しさよ     新庄佳以

  日傘買う母に合わせた花の色    高橋句美子

  葉切蟻季をばらばらにつるつるに   福富健男


豊田すずめ(とよた・すずめ) 1940年、東京都生まれ。



撮影・鈴木純一「佐嵯餓泥(ササガニ)の首をかしげた面ざしは」↑

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