塩見恵介第3句集『隣の駅が見える駅』(朔出版)、その帯には、
平成を駆け抜けた「船団」時代を総決算。
初夏というよりは「惜春」を思いたい。
初秋の風を身に受けながら「夏の果て」に心を寄せて。
と惹句してある。集名に因む句は、
燕来る隣の駅が見える駅 恵介
であろう。また、「あとがき」には、
(前略)さまざまな俳句の賞はたしかに現状の俳壇に飛び込むファストパスであるのは確かなのだけれど、この三十年、私はそのパスポートを持つこともなく、しかし有意義に色濃い時間を過ごせたのは僥倖としか言いようがない。俳句に対する恩返しの意味もこめ、この句集を編んだ。したがって、本句集は子育てや仕事など、私個人の生き方にまつわる句だけでなく、時に幼児に、時に女子学生に、時に老いた自分に、変身しながら作った句も多く入っている。また時に虫にも花にも星にもなって作った。
私にとって俳句は、森羅万象に対する共鳴・共感を探る場である。それを寛容に受け止めてくれる俳句の世界は多幸感に満ち溢れている。(中略)
句集のタイトルは『隣の駅が見える駅』とした。神戸の阪神電車にはこのような駅があって、いつも私は隣の駅を見て電車を待っている。
と記されている。ともあれ、集中より、以下にいくつかの句を挙げておこう。
犬動画見て猫動画見て日永
緑蔭を上書き保存して夕日
空き缶になって転んで夏休み
南風こびとは空をウミと呼ぶ
自転車を鳥居に駐めて秋澄めり
スタートライン最後に引いて運動会
球拾いたまに毬栗どけている
秋空のラの音高きさようなら
待っているわけではないが初時雨
十人の手話の拍手や冬銀河
母マスク子マスク歩くおなかすく
抱く子にも一粒持たせ鬼は外
亀鳴いて「愛は勝つ」って誰に勝つ
関係者以外も置かれ雛飾
塩見恵介(しおみ・けいすけ) 1971年、大阪府生まれ。
★閑話休題・・・「第4回口語俳句 作品大賞募集」(主催・口語俳句振興会)・・・・
・募集作品20句(一編) 2019年以降現在までの作品。既発表・未発表を問わない。
・〆切 2021年8月31日(火)
・参加費用 2000円。句稿に同封または郵便振替(00870-8-11023 口語俳句協会)にて
・送稿要領 B4 400字詰原稿用紙一枚に書く(ワープロ可)右欄外に表題を書き、20句(そのままが、選にまわります)。別の200字詰原稿用紙に表題・作者名・所属(なければ無し)・郵便番号・住所・電話番号を明記。
・選考 公開最終選考会を11月、島田市にて開催。
・授賞 作品大賞一編・奨励賞若干編。授賞式は翌年1月、島田市にて。
・発表 口語俳句振興会会報「原点」第9号誌上。
・送り先 422-8045 静岡市駿河区西島912-16 萩山栄一方 口語俳句振興会事務局
電話・FAX 054-281-3388
・選考委員 秋尾敏・安西篤・飯田史朗・大井恒行・岸本マチ子・谷口慎也・前田弘 ほか旧「口語俳句協会賞」選考委員および「現代俳句」編集長。
・主催 口語俳句振興会、 後援 (株)文學の森
撮影・芽夢野うのき「さてはさてはふつか花とてまだ白」↑
0 件のコメント:
コメントを投稿