2021年7月29日木曜日

仁科 淳「秋天をあふぐ噂のミルフィーユ」(『妄想ミルフィーユ』)・・・



  仁科淳第1句集『妄想ミルフィーユ』(ふらんす堂)、「はじめに」のタイトルに「ひきこもり歴三十二年ー統合失調症発症 妄想のなかの日々ー」とあり、


 俳句をつくりはじめたのは伝えたいことがあったから。

 人に弾かれ世に弾かれしてもやっぱりひとに支えられてきた。

 その感謝は誰かに何かを感じてもらえることで

 昇華できるものでもないけれど。やっぱり発信したい。(中略)

 そして所謂「普通」の生活を生きられることが

 一番しあわせなことなのだと。

 手にとってくださった方が感じてくださればと祈りつつ――


 と記されていた。巻末の一句のみが一頁一句立ての以下の句であり、他は一頁二句立ての見開き4句のレイアウトになっている。


  きみに会ふまでに八重桜に変はらん


 句を読み、略歴などを読むと、俳句は独学のようである。因みに、句集名に因むであろう句は二句ある。


  「妄想」と追はで視野に蜘蛛を追はで

   秋天をあふぐ噂のミルフィーユ


 の句である。ともあれ、以下にいくつかの句を挙げておこう。


  共に負はせてくれよ旱天に鳥

  我がゐておぼろ君ゐてうつつかな

  此の春のたたへてをれぬ涙かな

  冬麗や聴こえむ耳孔骨に空く

  泣き初めの無きや泣きをさめの無くて

  疾風に捥がれて花の入水かな

  新書の栞そそけをり春ふかし

  露の身の悲喜にながせる涙かな

  蛇足かと思ふが蛇足穴まどひ

  口実に病つかはず放屁虫

  カンパニュラ戀如何にうらぶれようか

  冬鵙の法に触れなばかまはぬか

  些事あまたある視野にも鏡餅


 仁科淳(にしな・じゅん) 1971年、山形県生まれ。 



     芽夢野うのき「ヤブランに日の差すまえの雨やさし」↑

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