2021年7月8日木曜日

岸本葉子「空池を黄雀風の吹く日なる」(『つちふる』)・・・ 


  岸本葉子第一句集『つちふる』(角川書店)、集名に因む句は、

 

   つちふるや汀の線のかく歪つ      葉子


  だろうが、「つちふる」では、他に、


   霾や旗の余白に名の数多


 の句がある。こちらの方が味わいが深いかも知れない。また、「あとがき」には、


 (前略)残すことは考えていなかった。兼題や席題、遭遇した事物をきっかけに、思いがけない十七音が自分の中から出てくる驚き、その場を人と分かち合う高揚感のうちに過した。

 立ち止まったのは二〇二〇年、疫病の蔓延のため句会に集うことができなくなったときだ。散逸してしまわないうちに保存しよう。緊急事態宣言のため家にいる時間がかつてないほど長い、今しかない。(中略)

 ひとりの作業も、孤独ではなかった。一句一句に、その句の生まれる場を共有した人々を思い出していた。句の数は、参加する句会の定まった二〇一三年以降が圧倒的だ。作句における句会の存在の大きさを実感する。


 とあった。ともあれ、愚生好みに偏するが、以下にいくつかの句を挙げておきたい。


  嚏して酒のあらかたこぼれたる

  土を蹴り木の根を踏みて神遊

  伝鎌倉街道烏瓜の花

  秋扇をたたみて軽したたまぬも

  石段の先は水際秋の昼

  水音か枯葉のこはれゆく音か

  四畳半・裸・経済学序説

  外套や消えゆくものに革命歌

  暴虐と伝はる王の裘

  さうあれが海市のくづれはじめなる

  死なないでゐるから餌をやる金魚

  月光を攫ひて戻らざる波か

  凍鶴をもつて墓標となせと文

  ひとつだにこぼれ落ちざる昴かな


 岸本葉子(きしもと・ようこ) 1961年、神奈川県鎌倉市生まれ。




★閑話休題・・・日本現代詩歌文学館・10月10日(日)「きたかみ鬼の国 俳句フェスティバル」(於・さくらホール)・・・


 日本現代詩歌文学館・10月10日(日)「きたかみ鬼の国 俳句フェスティバル」シンポジウム「怖い俳句を語る」。シンポジスト/募集句選者は、宮部みゆき・夏井いつき・神野紗希(コーディネーター)。当日句(一人一句)選者は白濱一羊・照井翠・高野ムツオ・粟津ちひろ。当日句の受付は午前11時~12時半。

当日参加(無料)は、募集句への応募が条件。

★作品募集 締切  8月10日(火)必着

      応募料 2句一組/1000円(専用応募紙は詩歌文学館ホームページからダウンロード)。

      応募先 024-8503 北上市本石町2-5-60

          日本現代詩歌文学館 俳句フェスティバル 係



     芽夢野うのき「ひまわりの種をたべると耳鳴りす」↑

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