月犬第2句集『夜の鹿/植物圖鑑/火の匂ひ』(夜窓社)、著者自装、封書に三分冊されている(「壱 夜の鹿/唇からナイフ」「弐 植物図鑑/地獄の黙示録」「参 火の匂ひ/迷はぬ犬/マンドリン」)。集名のひとつ「夜の鹿」に因む句は(原句は正字)、
少し野蛮とても優雅な夜の鹿 月犬
だろう。本名は略歴にあるが三宅政吉。愚生がお会いしたのは、もう十年以上以前のことである。愚生20歳代の初め頃からの付き合いであるワイズ出版社主・岡田博の紹介で、装幀家として紹介していただいた。俳句では、彼の師系、連衆は知らないが、現在、れっきとした俳誌「らん」の同人・月犬である。それ以外の来歴については、愚生は、とんと知らないので、本句集巻末の自筆略歴によると、
一九五一年福岡市生まれ。十代からマンガを描きはじめる。同人誌『跋折羅』を経て『幻燈』(北冬書房)、『走馬燈』(書肆フリークス)などに作品を細々と発表。貸本マンガ史研究会会員。『貸本マンガ史研究』に貸本マンガに関する論考を、これも細々と発表する。
二〇〇四年ころから俳句を作り始める、句集に私家版『鳥獣蟲魚幻譜抄』(夜窓社/二〇一七年)がある。
と記されている。ともあれ、集中より、愚生好みに偏するがいくつかの句を挙げておこう。
月光ノ届カヌ場所二横タヘヨ
引金にヒルガオ撃鉄に風
たんぽぽまづ撃鉄を起こさねば
たましひの話などして松の花
栗の花溢れ不眠の映写技師
剃刀の刃の上を這ふ蝸牛
熱帯の蝙蝠。大佐は行方不明
宙吊りの鼬が見える冨士も見える
傷口が乾かぬ。春の虹がかかる
燕来たとしても約束は破る
芽夢野うのき「脱皮直前の蟬ためらいの飴色」↑
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