髙柳克弘第3句集『涼しき無』(ふらんす堂)、著者「あとがき」に、
(前略)こ句集に主題の明確な作が多いのは、私なりの挑戦だ。とはいえ、作者の意図は脇に置いて、読者の方には、自由に鑑賞していただければ嬉しい。たとえば子供を詠んだ句が多いが、この句集に出てくる子供は、私の息子でもあり、戦場のみなしごでもあり、安寿厨子王でもあり、あるいは私自身でもあるだろう。
と記されている。また、集名に因む句は、
子にはほほゑむ母にすべては涼しき無 克弘
であろう。ともあれ、集中より愚生好みに偏するが、いくつかの句を以下に挙げておこう。
本書くに読む本の数柚子の花
街の時間原野の時間鳥渡る
噴水や団結を説くビラ浮ける
ふところに拳銃欲しき秋の暮
電脳の妖精の国冬籠
魔術なきこの世に奇術冬灯
盤上の兵はひるまず揚雲雀
機械は人に人は朧に近づく夜
弾丸もヘアピンも鉄夏の月
桃・煙草ゾンビの方が楽しさう
年忘れ毒もて制しきれぬ毒
ぬぐふものなくて拳や米こぼす
水草生ふ死ぬならばその腕にこそ
紙雛換気の風に倒れけり
ハンカチを敷くやひとりの花筵
髙柳克弘(たかやなぎ・かつひろ) 1980年、静岡県浜松市生まれ。
撮影・中西ひろ美「万感の花咲き終へし緑かな」↑
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