2017年4月21日金曜日

北大路翼「滅びゆく日本の隅で金魚飼ふ」(『第七回田中裕明賞』)・・



 『第七回田中裕明賞』(ふらんす堂)は、第七回田中裕明賞決定までの選考委員会の経過と、受賞記念の神楽坂吟行、祝賀会の様子などをまとめた冊子(というよりも一冊の分厚い単行本という感じだが)である。候補作句集のいちいちの評価について、石田郷子・小川軽舟・岸本尚毅・四ッ谷龍の各選考委員が意見を交わしているのだが、四ッ谷龍のある種の激しさに(もちろん、作品の評価をめぐってだが)、他の選考委員は抗しきれないという感じがしないでもない。それだけ四ッ谷龍の田中裕明賞に対する熱意が半端じゃないということなのではないだろうか。とはいえ、今回の候補作をみると、たしかに北大路翼『天使の涎』が句集としては最右翼で相応しい、と思う。もっとも、『天使の涎』が他の俳句関係の協会賞を受賞するとは到底思えない。それだけでも田中裕明賞の価値が上がろうというものだ。ついでと言っては恐縮だが、本書冒頭の受賞作品『天使の涎』から32句が紹介されているが、意外に普通の作品ばかりが大人しく並んでいる(一句独立では弱いか?)。むしろ、選考委員の評議の中で語られた句の方が面白く、受賞作に相応しいインパクトがあるようだ。その意味では岸本尚毅が語っていた、受賞作なし、受賞作ありとすれば北大路翼という、田中裕明賞のもつ性格上の判断は妥当なのかもしれない。
ともあれ、以下に、授賞式当日の吟行句会から一人一句を挙げておこう。

  風鈴の音はじめから狂ひある     藤井あかり
  百日紅人通るたび昏くなる      山口蜜柑
  のぼり来し坂かへりみて空涼し    小川軽舟
  三伏の石階に湯を使ふ音       石田郷子
  カフェに浴衣楽しくなつてゐるらしき 岸本尚毅
  時計草ひらく普通のかくれんぼ    鴇田智哉
  着水は身を平らかに通し鴨      矢野玲奈
  鬼灯とわからぬように置いてある   北大路翼
  人体を象る椅子や蝿が附き      四ッ谷龍
  百日紅紙の音たてくづれけり     鎌田 俊
  首細き人のささやき風知草      森賀まり
  脈々と藤下闇の木肌かな       中町とおと



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