2018年1月16日火曜日

鳴戸奈菜「いつ来るの早く来い来い宇宙人」(「らん」80号)・・



「らん」(らんの会)、皆川燈の連載・「雨の樹のほうへ42(清水径子の俳句宇宙)」の末尾には以下のように記されている。

 径子がたしかに聞いた「人生は短いよ」という耕衣の声が、二十年を経たいま、実に重たい真実として、ひたひたと春の岸を洗う。「真っ直ぐに前を見て歩いていくしかないだろう」。 
 創刊号の径子の中に次の一句があった。
  青き帯すれば満面早春よ
 うん、ちょっと元気が出てきた。

「らん」が創刊されて二十年、径子さんとはそれ以上の年月が経ったのだ。愚生も清水径子の自宅での句会にお誘いを受けて幾度かお邪魔したことがある。神戸での永田耕衣の会のあとのことだ。その頃に比べると「らん」の同人も増え、随分厚さも増している。確かに「人生は短いよ」かも知れない。当時の先輩の方たちはすべて鬼籍に入られた。
 ともあれ、創刊80号記念特別作品二十句集から一人一句を挙げておこう。

  枯らし鉄が作る精密作文機      五十嵐進
  黒蝶や黄泉比良坂今日も舞ふ     海上晴安(遺稿)
  キナクサキクニキタ二アリアキフカシ M・M
  また節を間違ふ笛や月今宵      岡田一実
  女らは鏡に老ゆる神無月       片山タケ子
  鳩の後真似て歩けば天高し      久保 妙
  癌めにも盃とらす淑気かな      嵯峨根鈴子
  昼寝覚めよもつひらさか蝶はむらさき 佐藤すずこ
  枯蔦のルーツたどればとぎれたり   清水春乃
  北風の磨く青空見てをりぬ      新條美和
  洛北のもみじからだを透過せる    水天
  泣く男ゐて十月の路地の奥      月犬
  たましいの遊びに出たる朧月     鳴戸奈菜
  飛花落花そろそろ神を信じるか    西谷裕子
  木枯一号唸る高さに白き月      服部瑠璃
  興行の幟の誤字や天高し       腐川雅明
  寒卵どこもかしこもつまらない    三池 泉
  夾竹桃の実は毒もてり拾いけり    皆川 燈
  東京都千代田区永田狸罠       もてきまり
  大山椒魚父を家にゆ取り戻す     矢田 鏃
  赤ん坊の原材料の秋の水       山口ち加
  犬もわれも飛ぶ夢をみる野分かな   結城 万
  少女の耳打ちくさめ怺らえたる    藤田守啓



           撮影・葛城綾呂↑





  






0 件のコメント:

コメントを投稿