2020年8月7日金曜日

田彰子「山藤がふるさとに巻く私にも」(『田さん』)・・




 田彰子第一句集『田さん』(ふらんす堂)、跋文は坪内稔典「四百年の空気」。その中に、

(前略) 山藤がふるさとの巻く私にも
     桐の花捨女の声を真似てみる
     くるくると日傘まわして木の根橋

 田さんの俳句というと、私はまっさきに右のような句を思い浮かべる。
 捨女は田捨女、一六三三年に丹波国柏原(かいばら)に生まれた女流俳人だ。彼女は六歳の折に「雪の朝二の字二の字の下駄のあと」と詠んだといい、俳句史にもっとも早く現われた女の俳人だ。われらの田さんはその捨女の一族である。つまり、捨女は田さんの祖先だ。

とある。また、

 田さんたちと自筆句集を翻刻して、二〇一六年に『捨女句集』(和泉書院)を出した。田さんはその本のあとがきで、叔父、季晴(すえはる)に触れている。その叔父は田家の十一世、実業家として成功し、生涯にわたって彼女の顕彰につとめた(柏原の田ステ女記念館などは季晴さんの寄付でできた)。(中略)
 私はある時の季晴さんの言葉を覚えている。坪内さん、田家には政治家や実業家などいろんな人はいたが、だれも五七五の捨女にかなわない。言葉や俳句の力はすごいものですな。その話を聞きながら、彼女を顕彰する季晴さんもすごい、と私は思っていた。

 と記している。ともあれ、以下に集中より、いくつかの句を挙げておこう。

    初夢や地球を腰にぶら下げて       彰子
    教卓の光となりて薄氷
    風の声濁音となる蕗の薹
    遮断機で待たされているしゃぼん玉
    春雷やからまっているネックレス
    風光る外来生物駆除作戦
    恐竜に恐竜の傷青嵐
    蝉時雨東洋陶磁美術館
    白線の先に跳箱秋澄みぬ
    小春日の穴のひとつに迷い込む
    我先にさわってみては初氷
    ふるさとの電話から降る雪の音
    
 田 彰子(でん・あきこ) 兵庫県丹沢市柏原生れ。



      撮影・鈴木純一「稲の花信ずるにたるものはある」↑

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