2015年7月1日水曜日

打田峨者ん「刳(ク)り舟に遠流(ヲンル)のミイラ 天の川」・・・



打田峨者ん第二句集『楡時間ー「組曲類」』(書肆山田)の光景は、いわゆる現俳壇に流通している俳句の景色とは違って見える。第一句集『光速樹』(書肆山田・2014年)は、彼の二十六年にも及ぶ句歴にもかかわらず、どこかに五・七・五と言葉の軋みが多く蔵されていたが、その後の一年で上梓された第二句集では、五・七・五と言葉の関係をより、緩やかだがより緊密に展開し、読者へのその世界の理解度を深めるのに功を奏していると思われる。
「あとがき」に以下のようにある。

  組曲ー即ち連作並びに群作を編むということは、私見によれば、構造物としての重層的な“余白の肉叢(ししむら)”を創り出すことに他ならない。
 俳句はほとほと“省略”と“飛躍”の表現態ゆえ、必ずや何がしかの、濃き又淡き余白を自づから醸し出す。もとより偶発的・結果的に発生するというような事ではなく、言わば“本質的・戦略的余白”とでも名づけうべきであろうところのもの。

挿画は、これまた俳諧者、詩人、ゑかき〈打田峨(たかし)〉という履歴にある自身の作である。
いくつか句を「楡時間》四季《巡礼の斧」「球春地平線」より、書き留めておこう。

     恩愛や栄螺(サザエ)のわたの深みどり
         偽典
     「見上げれば銀漢を突く磔刑樹」
     負ひ来たる父なる夕焼 楡のまへ  
     後逸と見るや韋駄天 猫柳
     草野球。荒野(あらの)。すぐろ野。若草野。
     生還す 併殺くづれの春の午後
     永き日のセカンド・ライナー拝み捕り

     片膝つき 出を待つ次打者 おぼろ月

打田峨者ん(うちだ・がしゃん) 1950年東京生まれ。無所属。句歴27年。


                ハンゲショウ↑

0 件のコメント:

コメントを投稿