工藤進句集『ロザリオ祭』(文學の森)。
跋は角川春樹。「マイセンに薔薇茶のひらくロザリオ祭」の句を挙げて、マイセンは「名実ともに西洋白磁の頂点に君臨する名窯である。工藤進の『ロザリオ祭』は、マイセンの紅茶茶碗に薔薇茶をひらかせた、という措辞が絶妙。まさに俳諧のモダニズムを開花させた、スタイリッシュな作品」と述べる。
工藤進の略歴を見ると句歴はさほど長くはないが、何もない愚生のようにではなく、受賞歴はかなり華々しい。それだけ、所属してきた結社では実力、期待度があったということにちがいない。現在は月間俳誌「くぢら」(主宰・中尾公彦)の編集長である。
いまでも、いわゆる俳壇では、草間時彦「甚平や一誌持たねば仰がれず」のご時世らしい。それゆえ、これから新しく俳壇にその位置を定めようとして立派な俳誌が鎬をけずっているようにも見受けられる。
周回遅れのランナーのような愚生には吐息がでるばかりだ。
ともあれ、いくつか句を挙げておきたい。
蒼天に涸れぬ水脈あり鳥渡る 進
千枚の田に千段の稲架襖
閏月まだ見ぬ蒼き夜が来る
キャンパスにさへづりの窓開きけり
遺著となる書に風入るる日となれり
春待つ日紅茶に薔薇のジャム溶かす
楼蘭の空渡りくる涅槃西風
天地のこゑが火となる原爆忌
核灼けていまだ終はらぬ戦後かな
天の奥天を鏡に朴の花
オシロイバナ↑
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