2016年1月29日金曜日

杉田桂「予告せしごとく雪降る鬼房忌」(『老年期』)・・・



掲出の句は、杉田桂句集『老年期』(文學の森)の巻頭句。佐藤鬼房は平成14年1月19日に死去。そのわずか一ヶ月前の12月1日に三橋敏雄も亡くなっている。ともに享年は82。
愚生が杉田桂と最初に会ったのは、たぶん塩竃で行われた「小熊座」10周年記念大会のシンポジウムに、小澤克己、片山由美子、高澤晶子らとともに参加したのちの二次会だったように思う。三橋敏雄も一緒だったように記憶している(すでに、20年も前のことになる)。その時に、「小熊座」東京句会の世話をしているというように聞いたような記憶があるが、もはやはっきりしない。後に多賀芳子の碧の会で何度か一緒になった。現在は「頂点」同人という。その杉田桂80歳代(昭和4年、宮城県生まれ)の第6句集が『老年期』である。句集「あとがき」に、

 私は「重くれ」の俳風を好み、一方に於て作品の卑俗性を嫌った。ただこの私の思想の俳句を充足させる為には、相当に優れた感性や詩性を必要とするが、既に加齢の洗礼を受けた私には最早錆びた感性しか残らずそれらが全く喪失していた。(中略)
 そしてようやく自分の活路を見つけた。それは、作品自体が卑俗でもよい。俗語を使っても構わない。身辺の惹かれた事実や言語、即ち森羅万象を思い通り作品化してみようということ。換言すれば、私の老年期の生活を、私ならではの発想と表現で作品化していきたいということである。

いくつかの句を挙げておこう。

    つわぶきや水に映らぬ我のあり      桂
    ひおうぎやあなどり難き二枚舌
    夜桜や饒舌の死者少なかり
    蝉しぐれ焦土なまなましくひそむ
        東日本大震災
    料峭や黄泉に拉致さる二万人
    炎天や捨てたる影にかこまれる
    新種には非ず汚染の奇形蝶
    ヒヤシンス手に触れしものみな孤独
    黄落や吾より抜けてわれを見し




                                             ボケ↑


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