2017年4月2日日曜日
櫛部天思「山笑ひ海笑ひ嬰泣いてをり」(『天心』)・・
櫛部天思『天心』(角川書店)。集名の由来は、著者「あとがき」に、
天心に星のあがりし寒鮃
句集名は、天上の星になられた先生の御心に適いたいとの願いで、掲句から名付けました。まさに『天心』は、亡き先生に捧げる句集です。
とある。先生とは、阪本謙二「櫟」主宰。一昨年の暮に急逝したとのことである。著者は現在、その「櫟」の副主宰だという。序文は現主宰の江崎紀和子。その序の冒頭に、
櫛部天思(くしべてんし)とわたくしは、平成五年に俳誌「櫟」を創刊した阪本謙二を師とした、言わば血のつながらない姉と弟である。
とあった。さすがに姉弟のちぎり、情愛の深い序文となっている。
偶然だが、先日届いた「子規新報」の特集が「櫛部天思の俳句」で、小西昭夫抄出30句が掲げられている。愚生はいつも思うのだが、小西昭夫の選句と、愚生の選句は違うなぁ、ということである。もちろんそれぞれの選句は違って当たり前のようなものだが、俳句観の違いが出る。どちらがいい悪いということではない。愚生はその違いをみるのが好きだ。そして、いつも「この選句は、コニシらしいな・・」と一人呟く(中には選の重なる句も、もちろんある)。
ともあれ、以下にいくつか句を挙げておこう。
花冷の邪鬼のこぼれんばかりの目 天思
去年の闇今年の闇となりにけり
タイ語ロシア語爽涼の造船所
笑ふ嬰新松子舐め何でも舐め
座せば尻のかたちに窪みうまごやし
大街道抜けて涼しき風に会ふ
芋虫をつまめば皮のなかうごく
八の字を一の字にして扇置く
雪嶺のかくもしづかに師を憶ふ
櫛部天思、1967年、愛媛県生まれ。
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