高橋将夫第六句集『蜷の道』(文學の森)、著者は岡井省二の没後、「槐」を継承した。集名は以下の句から、
田一枚知り尽くさんと蜷の道 将夫
「あとがき」には、
俳句の道に入って十年、主宰を継承してから十五年、通算二十五年余りが過ぎた。先師から継承した「俳句は精神の風景、存在の詩」の理念のもとで、「①簡明 ②深さとひろがり ③新鮮さ、オリジナリティー、作者ならではの視点」に留意して、自分なりの表現で、自分なりの俳句曼荼羅の世界を展開してきた。
とある。著者の師である岡井省二にはいくつかの思い出がある。ひとつは愚生が現代俳句協会青年部委員をしていた頃、シンポジウムのパネリストにお願いしたこと、あと一つは北宋社から出た『岡井省二の世界』に執筆させてもらったこと。そして、現在もなお「豈」同人である小山森生にまみえたことである(当時は岡井省二主宰「槐」にいた)。
その岡井省二が没してからも16年が経とうとしているのだ。主宰誌「槐」の創刊が遅く、独特な句風、しかもわずか10年ほどだったので、そのまま廃刊になるだろうと思っていたら、高橋将夫が継ぎ、もはや岡井省二生前よりもかなり長い年月を主宰として務めたことになる。感慨もあろうというもの。
ともあれ、いくつかの句を以下に挙げておきたい。
白板は全てが余白のどかなり
人生と夏山のよく曲がる
戦する星もありなん冬銀河
三日月の欠けしところを子が塗りぬ
真つ黒な雲真つ白な雪降らす
よく笑ふ人はよく泣く桃の花
異次元はこんなところよ春の闇
原発の灯す秋灯親しめず
人類のはびこる星を鳥渡る
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