2018年7月15日日曜日
河内静魚「風船の不安なかるさ持たさるる」(『夏夕日』)・・
河内静魚第6句集『夏夕日』(文學の森)、集名の由来は巻頭の句、
美しきところへ涼む夏夕日 静魚
そして、「あとがき」には、
句集名の「夏夕日」は、そんな都心のぶらつきの中から浮かび上がった。夏夕日の色彩の氾濫は、自由で気ままな身に、こよなき観想の場を提供してくれた。不思議なのだが、季語もいきいきと呼吸する。はるかなる憧れの海原、山野、京都、淡海が、目の前に浮かび上がる。そして、過ごしてきた月日を忘れメルヘンに遊び、少年の頃に戻ったりもした。都心の夕日の光と影が、幻のようにそのような四季の自然を呼び寄せてくれたのである。
と記している。河内静魚は自宅(港区白金)が再開発によって、新しい住まいができるまでの5年間を文京区千駄木に住むことになったのだという。いわば、都会の真ん中で幻視の旅を句の世界にしているのだ。
ともあれ、いくつかの句を以下に挙げておこう。
流さるることをしづかに秋の雲
海見えてすこし揺れたり発電車
鶯餅の尻だか腹だかよく伸びる
羅や鏡がはりの他人の顔
来る水と去る水秋の川とんぼ
次の波あひだを置かず寒かりし
見えてこそ淡海はよけれ初諸子
春二番その頃よりのものおもひ
紙折りて夜の深さよ素逝の忌
河内静魚(かわうち・せいぎょ)、1950年、石巻市生まれ。
月刊「俳句界」(文學の森)7月号より、編集長に就任。
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