「円錐」第89号(円錐の会)は、第5回「円錐新鋭作品賞」の発表である。(円錐編集部・山田)の筆によると、
過去最多67編のご応募をいただきました(中略)同人誌の企画にこれだけ多くの方々が参加して下さることに感動しています。
募集条件は、未発表の20句(多行作品は10句)。作者の俳句歴や年齢などの条件、一切不問。選考は、円錐編集部・澤好摩、山田耕司、今泉康弘。(中略)
審査の上、20句を対象に第一席から第三席までを選出。句単位での顕彰は5句。あらたに「これからに期待する作家」という枠を設けさせていただきました。
編集部としては予想していたことではあるのですが、三人の審査員の推薦作品が、まったく、重なりません。バラバラです。これこそが、個々の価値観を頼みに活動する同人誌ならではの結果、と言えるかもしれませんが。(以下略)
とあった。ちなみに、「花車賞」(澤好摩推薦)には森瑞穂「吊革の穴」、「白桃賞」(山田耕司推薦)には原麻理子「距離」、「白泉賞」(今泉康弘)には摂氏華氏「王の行方」。 摂氏華氏は、すでに喜多昭夫という歌人にして短歌誌「つばさ」の主宰でもある。ともあれ、受賞作、推薦作より、いくつかを挙げておこう。
水になるとき匂ひたるうすごおり 森 瑞恵
冷めてすぐしぼむケーキや春の風 原麻理子
すめらぎの股肱となりし揚雲雀 摂氏華氏
湧きてはや水は暗渠へ赤蜻蛉 古田 秀
埋め立ての町に浜の名みやこ鳥 中村たま美
抜錨の濁りをとほく春の雪 内野義悠
らしからぬことをしてゐる雛祭 霜田あゆ美
注連縄や褐色瓶に閉づる毒 千住祈理
缶詰にぐずる水音秋深し クズウジュンイチ
ピンボール突き撃つコルク終戦日 佐藤 修
にはたづみ鼠花火を往なしたり 舘野まさひろ
転生したら闘牛をする約束の口づけ 喪屑ちゃん
窓開けて春をお部屋に案内す 大野美波
パーカーの手とか林檎を入れる部分 田中木江
脳に打つ成人の日のチップかな 高林やもり
撮影。鈴木純一「御用学者(カイイヌ)と信じていたに上で吼え」↑
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