神野紗希『俳句部、はじめました』(岩波書店)、帯の惹句に、
詠もう 読もう / 俳句は君を / 待っている
ジュニスタ創刊!(中学生の探求学習に最適!)
とある。表4側の帯には、「岩波ジュニアスタートブックス」とあって、他の刊行図書として、中満泉『未来をつくるあなたへ』、鎌田浩毅『地震はなぜ起きる?』、小西雅子『地球温暖化を解決したいーエネルギーをどう選ぶ?』のラインナップがある。表4の惹句には、また、
俳句は五七五のリズムにのせ、/季節の言葉の力を借りて詠む、/小さな小さな詩です。
十代で俳句に出会い作句を続ける著者が/その魅力を伝え、作り方を伝授します。
十七音のカンバスに、一度きりしかない/あなたの「今」を描いてみましょう。
ともあった。「俳句が世界を変える—あとがきにかえて」の冒頭には、
科学は、病気を治す薬を発明したり絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ)を守ったり、世界そのものを変える力をもちます。一方、文学は、世界のとらえ方を変えるものです。
と記されている。ここでは、「十七音、コトバの宇宙」の章から、一か所引用しておこう。
月凍(こお)る辺野古(へのこ)の土砂にジュゴンの死 岡田真巳
愛媛新聞「青嵐俳談」
美しい沖縄・辺野古の海。海域には絶滅危惧種(ぜつめつきぎしゅ)のジュゴンも生息していましたが、アメリカ軍基地の移設工事が進む中、二〇一九年には一頭の死骸が発見されました。冬とはいえ暖かい沖縄の月を「凍る」とまで厳しく感じるのは、ジュゴンの死を重たく受け止めるがゆえです。当時、高校生だった作者が、思いをこめて社会に投げかけた一句です。(以下略)
ともあれ、本書中より、いくつかの句を挙げておこう。
失恋や御飯(ごはん)の奥にいなびかり 高山れおな
水の地球すこしはなれて春の月 正木ゆう子
小鳥来る三億年の地層かな 山口優夢
まくなぎよ地球は君をこぼさない 池田澄子
西瓜(すいか)食ふまだ机なき兄妹(あにいもと) 小川軽舟
神の留守母子家庭ですけど何か 永瀬十悟
口開けて叫ばずシャワー浴びてをり 五島高資
春はすぐそこだけどパスワードが違う 福田若之
霧深き森へ隠そうシリアの子 宇多喜代子
コンビニのおでんが好きで星きれい 神野紗希
神野紗希(こうの・さき) 1983年、愛媛県生まれ。
撮影・鈴木純一「立葵の動きをまねる 悪くない」↑
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