湊圭伍現代川柳句集『そら耳のつづきを』(書肆侃々房)、帯の惹句には、
マグカップで壊せるような朝じゃない
現代川柳は《現在》の破片である―。
川柳の伝統を批判的に受け継ぐ現代川柳作家による480句。
とある。集名に因む句は、
そら耳のつづきを散っていくガラス 圭伍
だろう。また、著者「あとがき」の中に、
句集を出すに当たって、「圭伍」を名乗ることにしました。前々よりペンネームを使った方が(少しだけ)自由かなと考えていたものの決心がつかず。さすがに句集を出すタイミングが最後の機会ということで、松山川柳界の大先達・前田伍健先生の名前から一字を拝借するという、まことに厚かましい案ですが、霊峰・石鎚山の山頂から飛び降りる気持ちで実行してみることにいたしました。お𠮟りも含め、イジっていただけると助かります。
川柳とは何ぞや、ということを書こうかとも迷ったのですが、今のところ、先に謝辞を述べさせていただいた人たちが展開している自由で豊かなコトバの世界が川柳だ。(中略)
「川柳の伝統の批判的継承者」という言葉をアレンジして句集帯に使用させていただきましたが、そのような気概でやっていこうと考えています。詩歌の界隈を三十年ほど歩いてきて、多くの方とすれ違ってきましたが、あんないい加減なことを言っていたやつがこんなところに行きついたのかと認識していただけると幸いです。
とあった。ともあれ、集中よりいくつかの句を挙げておこう。
ヒントが出てようやく謎々と気づく
そのままはここから何処へ行くだろう
山肌を見せてやる気はなかったが
砂の軽さ、砂の重さの繰り返し
支持率はすぐに羽化することでしょう
カクレミノという木があって考える
帽子屋の奥はからっと晴れている
煽ってませんよ曲順を変えだけ
いきなり降ってくる金と銀の斧
夥しい腕にびくびくしてしまう
身も蓋もなく皮膚のみで在らしめよ
諭されて棺のなかを触れてみた
車中泊みんな着ぐるみぬいぐるみ
閲覧できます毛羽立った文字が並んでいる
何となく明るいほうへハンドルを
湊圭伍(みなと・けいご) 1973年大阪生まれ。松山氏在住。
撮影・中西ひろ美「生くによき死ぬるにもよき夏の川」↑
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