金子敦第6句集『シーグラス』(ふらんす堂)、栞は仲寒蟬、それには、
『シーグラス』を読み通してこんなに「名は体を表わす」と言うに適う句集はないと感じた。実に様々な色がある。美しいけれども放つ光は原色でなく年月を経た渋みが加わっている。丸みを帯びて誰の心にも和みを届けてくれる。
とあった。集名に因む句は、
ゆく夏の光閉ぢ込めシーグラス 敦
である。また、著者「あとがき」には、
「新緑の光を弾く譜面台 金子敦」という句が、東京書籍株式会社の中学校国語教科書『新しい国語』に採用されることになった。二〇二一年四月から四年間にわたり掲載される予定。誠に光栄なことである。それを記念して、同じ時期に句集を出しておきたいと思った。
という。ともあれ、愚生好みに偏するが、集中より、いくつかの句を挙げておこう。
恋猫の尾に花びらの乾きたる
聖火のごとソフトクリーム掲げ来る
鰯雲越しにメガホン投げ渡す
雪女より合鍵を渡さるる
滑り台経由ぶらんこ行きの風
銀漢を越ゆる魁夷の白馬かな
げんこつで笑窪を作り雪だるま
エッシャーの階段上りゆく朧
下闇を出て黒猫に戻りけり
オムライスの旗は靡かず七五三
金子敦(かねこ・あつし) 1959年、横浜市生まれ。
撮影・鈴木純一「メカニズムは知っているけど虹を呑む」↑
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