2022年4月23日土曜日

久保純夫「久保るみ子/瑠璃茄子に身を委ねたり戀人よ」(『動物圖鑑』)・・


  久保純夫第14句集『動物圖鑑』(儒艮の会)、その「あとがき」に、


 第一四句集は『動物圖鑑』です。前句集『植物圖艦』に載せる俳句を選び、推敲も終わったときから、動物に関する俳句を作りはじめました。二〇二一年八月半ばから始め、一〇月の初旬にはだいたい終わっていました。そこからおもいついて「人」も作ることにしたのです。その間、小池真理子著『月夜の森の梟』に触発されて、オマージュ、あるいは魂鎮めとして一五〇句をものすることにもなりました。(中略)

 また畏れ多くも、番外として「人」の項もあります。ここに対象とした方方は、僕が大好きな作家のみなさまたちです。


 とある。ともあれ、ここでは、番外の「人」の項目かのみ、いくつか挙げておきたい。一人の作家に3句ずつが配され、そのうちの一句の太字の部分は、その作家の名が詠み込んであるが、ここでは、それも省略した(愚生のパソコン技術は、そこまで表記を複雑にできない・・)。


       鈴木六林男

    虚しさは林檎の赤と置き換えぬ       純夫

       西東三鬼

    再会の胸乳おそろし茸狩

       小川国夫

    國中の虹は二重と覚えたり

       中上健次

    蹴鞠する無上の極意児雷也よ

       那珂太郎

    たたなわる朗君あまた浮いてこい

       林田紀音夫

    桔梗の眠っておりぬおしらさま

       和田悟朗

    轟轟と楼蘭にあり馬の群

       三橋敏雄

    特別な使命とありぬ狼よ

       高柳重信

    白桃にピサの斜塔を育ており

       宇多喜代子

    麒麟児に夜が来ている紅蜀葵

       寺井谷子

    端正に匂う色の香獨楽の芯 

       加藤郁乎

    異界からくろしおあふれ夜光蟲     

       攝津幸彦

    識閾の眼の奥に雪が降る

       小池真理子

    真夜中の梁塵秘抄戀いにけり

       紀和 鏡

    隠国の神獣鏡の淑気かな

      

 久保純夫(くぼ・すみお)1949年、大阪府生まれ。



 撮影・芽夢野うのき「名は知らぬ花なれど、とて、花なるや」↑

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