久保純夫第14句集『動物圖鑑』(儒艮の会)、その「あとがき」に、
第一四句集は『動物圖鑑』です。前句集『植物圖艦』に載せる俳句を選び、推敲も終わったときから、動物に関する俳句を作りはじめました。二〇二一年八月半ばから始め、一〇月の初旬にはだいたい終わっていました。そこからおもいついて「人」も作ることにしたのです。その間、小池真理子著『月夜の森の梟』に触発されて、オマージュ、あるいは魂鎮めとして一五〇句をものすることにもなりました。(中略)
また畏れ多くも、番外として「人」の項もあります。ここに対象とした方方は、僕が大好きな作家のみなさまたちです。
とある。ともあれ、ここでは、番外の「人」の項目かのみ、いくつか挙げておきたい。一人の作家に3句ずつが配され、そのうちの一句の太字の部分は、その作家の名が詠み込んであるが、ここでは、それも省略した(愚生のパソコン技術は、そこまで表記を複雑にできない・・)。
鈴木六林男
虚しさは林檎の赤と置き換えぬ 純夫
西東三鬼
再会の胸乳おそろし茸狩
小川国夫
國中の虹は二重と覚えたり
中上健次
蹴鞠する無上の極意児雷也よ
那珂太郎
たたなわる朗君あまた浮いてこい
林田紀音夫
桔梗の眠っておりぬおしらさま
和田悟朗
轟轟と楼蘭にあり馬の群
三橋敏雄
特別な使命とありぬ狼よ
高柳重信
白桃にピサの斜塔を育ており
宇多喜代子
麒麟児に夜が来ている紅蜀葵
寺井谷子
端正に匂う色の香獨楽の芯
加藤郁乎
異界からくろしおあふれ夜光蟲
攝津幸彦
識閾の眼の奥に雪が降る
小池真理子
真夜中の梁塵秘抄戀いにけり
紀和 鏡
隠国の神獣鏡の淑気かな
久保純夫(くぼ・すみお)1949年、大阪府生まれ。
撮影・芽夢野うのき「名は知らぬ花なれど、とて、花なるや」↑
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