重留香苗第一句集『七つの子』(本阿弥書店)、序は加古宗也。その冒頭に、
香苗さんは”熱き人”である。それは友人に対しても、家族に対しても、あるいは花・鳥に対してもである。言葉をかえると出会いを大切にし、絆を深めることにいい意味での才能をもっている人だと思う。その才能が時に負に働くことも無いとはしないだろうが、そのことは持前の明るさで乗り越えてきたように見える。
とある。また、著者「あとがき」には、
(前略)私は、離婚後シングルマザーで、百貨店のアパレルの出向店長で二十年余りを勤め、課長職で退職しましたが、平成十五年、生まれ育った京都の宇治を離れ、会社の異動で名古屋に居を移しました。そしてこの地で俳句と出会い、又、主人との再婚をしました。この二十年は、私の人生の中で一番幸せな月日となりました。再婚後は、思いもよらぬご縁でまた、若い頃の夢であった幼稚園教諭として復職。十三年経った今もパートで勤めています。(中略)
句集名は『七つの子』とします。〈木守柿母口遊む「七つの子」〉の句から取ったものです。
私の母は、二十歳の若さで山口県から嫁ぎ、幼子三人を残され戦争未亡人になりました。その後江戸時代より続く宇治茶の生産農家が大事と戦死した夫の弟と再婚し、私たち四人が生まれました。母は辛く苦しい時はいつも、童謡の「七つの子」を唄っては慰められた、とよく私に話してくれました。それで、以前から句集を出すときは、『七つの子』にしようと決めていました。
とあった。ともあれ、愚性好みに偏するが、集中より、いくつかの句を挙げておきたい。
母米寿「おおきに」ばかり云うて萩 香苗
露しぐれホームで父に書く手紙
子に戻る母に頬摺り小豆粥
大百足その足全部上げてみよ
だしぬけの解雇予告や春の闇
茶畑をめぐる柩に茶師の父
さみどりに豆の煮上がる多佳子の忌
さみしくてだれにでもつくゐのこづち
埋火や母に前夫のラブレター
木枯しや両手は子等を抱くために
図書館にゲンもアンネも開戦日
母を待つ汗の子延長保育の子
春北風の紙ひかうきの屋根に乗る
吾も娘も母も再婚冬ざくら
重留香苗(しげとめ・かなえ) 1952年、京都府宇治市生まれ。
撮影・中西ひろ美「春日や降らず晴れずもそのままに」↑
0 件のコメント:
コメントを投稿