「俳句四季」2023年1月号(東京四季出版)、創刊40周年記念特集は、今月と来月号の2号連続「俳句の未来予測」、「十年後の俳句、俳壇はどうなっているか、また、どうなってほしいと願うのか」である。今号の執筆陣は、愚生の他に、秋尾敏・天野小石・大塚凱・奥坂まや・黒川悦子・坂口昌弘・塩見恵介・筑紫磐井・土肥あき子・仁平勝・野口る理・堀田季何・三村純也・宮本佳世乃・渡辺誠一郎。さすがに年齢によって考えることに差が出てくる。ただ、AI俳句に関する言及は多かったようである。興味ある読者諸兄姉は読まれたい。
未来予測はともかく、「俳壇観測」連載240・筑紫磐井「堀田季何は何を考えているかー有季・無季、結社、協会」は面白い。
堀田季何のものの考え方がよくわかったのは、二〇一八年十一月十七日金子兜太のシンポジウム(「兜太と未来俳句のための研究フォーラム」)を開催したとき、何人かのパネラーにいくつかのテーマで基調講演を依頼した。(中略)
(具体的には兜太)がノーベル賞を取るための条件を語ってもらった。(中略)結論は①作品を選ぶこと、②優れた翻訳をすること。③そうした翻訳を大量に流通させること、④媒体を選ぶこと、⑤読者のレベルを上げること、などだ。面白かったのは①で、日本ではどんなに優れた俳句でも外国人に伝達不可能な俳句は紹介を断念した方がいいという、確かに考えればもっともだが、言われてみると実にドライで面白い。また、②では兜太の翻訳された俳句がいかにいい加減かを例を挙げて紹介していた。
そして磐井は、季何がこれまで上梓した句集についてそれぞれ評を加えている。さらに、
最近の堀田の活動は更に枠をはみ出している。直近の例を見てみよう。二〇二一年春に、「楽園」という電子媒体の俳誌を創刊し、年一回はそれを紙の版としている。立派な主宰者となったのだ。しかし、これは(中略)、堀田に主宰者志向が在ると言っては誤解となろう、戦略の一環なのだ。また現代俳句協会幹事として、新法人の組織設計や定款作りをするなど、新法人発足の中心人物となっている。組織の起案者は、えてして次の時代を主導するものだ。(中略)
かつてこのような戦略志向の作家がいたかと言えば、実は一人いたと言いたい。それは坪内稔典である。坪内以来の戦略作家を、我々は俳壇に迎えようとしているのである。
と結んでいる。その意味では、かつて「過渡の詩」を標榜した坪内の「『船団』の散在」もまたその延長線上にある見事な結論だった、といえよう。ともあれ、同号より、愚生好みに、いくつかの作品を以下に挙げておこう。
ゐのししの舌(タン)切り取りて供へけり 谷口智行
あかあかと我が身ありける初湯かな 小澤 實
鎮魂の日のめぐり来て寒風にジャノメエリカの葯黒く揺る(阪神淡路大震災)
栗木京子
北風にビッグイシューを掲げ立つ 天宮風牙
秋晴やゆびてっぽうにかなり皺 岡村知昭
跳ね橋の上がりきつたる白夜かな 岸本葉子
万緑や永久の被曝のままなれど 高野ムツオ
それぞれに生年月日原爆忌 川崎果連
★閑話休題・・金子兜太「河より掛け声さすらいの終るその日」(『語りたい兜太 伝えたい兜太ー13人の証言』より)・・
聞き手・編者 董振華/監修 黒田杏子『語りたい兜太 伝えたい兜太ー13人の証言』(コールサック社)、その帯に、高山れおなが記している。
我々の俳句は、これからも、なんどでもこの人から出発するだろう。「十三人の詩客」がそれぞれに見た永遠の、可能性としての、兜太ーー。
李杜の国からやってきた朋が、これらの胸さわがせる言葉をひきだした。
13人の詩客は、井口時男・いとうせいこう・関悦史・橋本榮治・宇多喜代子・宮坂静生・横澤放川・筑紫磐井・中村和弘・高野ムツオ・神野紗希・酒井弘司・安西篤である。写真も多く掲載されているが、各人の各扉ページには董振華と各氏のインタビュー時のツーショットと末尾には各氏の略歴と兜太10句選が添えられている。
董振華(とう・しんか) 1972年、中国北京生まれ。
撮影・中西ひろ美「外国(とつくに)の和韻に酔ふて柊は」↑
いつもありがとうございます
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