矢野玲奈句集『森を離れて』(角川書店)、序は有馬朗人。帯は星野高士。美しい装幀は夫君・松尾清隆。実に幸せな船出の第一句集の印象である。句も作者の等身大の良さがうかがえるような作品である。取り合わせなどという流行ものでない一物仕立ての句が多いのも良い。それを有馬朗人は「現代的知性と明るい抒情に満ちた、実に楽しい句が並んでいる」(序)という。そして有馬朗人の願う次なる新天地に向かう幸せはいかなる方向なのであろうか。
たぶん、日常にしっかり足を踏みおいて進まれるに違いない。
矢の森を離れて玲としてならむ 恒行
いくつかの愚生好みの句を挙げよう。
春の海渡るものみな映しをり 玲奈
江ノ電の一駅分の時雨かな
しめぢ飯炊きあがりたるふつうの日
目印の鳥の巣いつも鳥をらず
新蕎麦や客の着くたび席をつめ
川の字の一画となる寝正月
梅雨晴間一人遊びのトイピアノ
笑つても泣いても息の白きかな
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