『鳥風』(ふらんす堂)は『雑華』(牧羊社)、『磊落』(ふらんす堂)に続く大石香代子の第三句集。平成14年から25年秋までの句から396句選んだという。
印象では後半の句のほうが良い。それを小川軽舟は帯文に「
春惜しむ店の机にもの書いて」の句を引いたのちに、以下のように記している。
香代子さんの句はどれもなつかしく、ほのかに寂しい。いつか失う予感を孕んでいるからだろう。だから一層なつかしい。家業の和菓子屋の机から顔を上げた香代子さんの行く道は、この句集から始まっている。
この始まった道の行く方にどのような句境がさらに開けるのか、楽しみではある。
愚生の献句とさらに好みの句をいくつか挙げておこう。
大石に鳥風かおる代もあらね 恒行
きはやかに夢見てよりの春の風邪 香代子
蝸牛山巓の気と雲とあふ
鳥雲に入ると帽子の中也かな
春浅し水辺の鳥と樹の鳥と
うすらひに塵泥(ちりひぢ)
のあるさみしさよ
地の鳩の何にせはしき花の昼
蝶生まる文字はことばの影ならむ
雪加鳴く割れてするどき石の稜(かど)
九段坂下冬青空を鳥礫
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