2020年4月26日日曜日

金子兜太「アベ政治を許さない」(「俳句界」5月号より)・・



 「俳句界」5月号(文學の森)の特集は、「金子兜太の真実」。作品のみではなく、兜太の人となりなど多彩に論じている。なぜ兜太特集を今もなお組むのか?については、問わず語りに、社長・寺田敬子の編集後記が以下のように述べていることに対応しているのではないか。他の俳句総合誌では見られない過激さである。

  (前略)社会を不安にさせる仕組まれた株価暴落、さらに大型企業倒産時代へと突入したわけで、これから国難がくる。しかも強欲な人間は自然と環境破壊を繰り返しては生物の種を絶滅寸前まで追い込んできた。(中略)この新型コロナウイルスを引き金に国境や国籍意識を無くして世界を一つの市場とする、独裁政府を作る為の世界恐慌へと導かれている。

  また、松本佳子副編集長は(このところ毎月「編集後記」には俳句界編集長が不在のようだ)、

 今回は、「金子兜太」論を時代とテーマで分け細分化して書いていただいた。

 という。因みに目次をを拾うと、宮崎斗士抄出「金子兜太百句」、安西篤「総論 金子兜太の生涯と俳句」、〈時代別論考〉として、佐々木靖章「終戦までの兜太俳句」、武田伸一「社会性俳句時代」、柳生正名「造型俳句時代」、中村孝史「日銀時代」、小川軽舟「定住漂泊と兜太俳句」、筑紫磐井「荒凡夫と兜太俳句」。〈テーマ別論考〉に、堀之内長一「兜太にとっての『海程』」、宮坂静生「兜太にとっての小林一茶」、宇多喜代子「現代俳句協会で成し遂げたこと」、伊藤淳子「カルチャー教室での兜太」、山中葛子「海程秩父道場での兜太」。〈エッセイ〉に黒田杏子、酒井弘司、塩野谷仁、高野ムツオ、マブソン青眼と陣容を揃えて、略年譜もあって、大よそのことは分かる。皆さん、顔なじみの方ばかりだ。愚生もそれなりに金子兜太と会ってきたが、本特集のお蔭で、愚生の知らなかった兜太にも触れることができた。それらの中で、筑紫磐井は、

 (前略)そしてそれは更に遡れば、社会性俳句における態度の中心である作者(兜太)と社会(大衆)の関係に還元できると思われる。造型俳句において極度に孤心化・抽象化したところが反動で拡散・具象化するのである。だから実はそれは、最晩年の「アベ政治を許さない」にまで繋がると思うのである。
 節操なくキャッチフレーズを変えたように思われるがそんなことはない。言葉が替わらないと生きた思想にならないのだ。(中略)  
 兜太は思想に合った言葉を探し続けた人だった。

 と述べている。ともあれ、本誌より、兜太晩年の句のいくつかと、佐高信の甘口でコンニチハ!の本号の対談相手、北の富士勝昭の一句を以下に挙げておこう。この方には、かつて間村俊一の会で遠望したことがある。

   朝蟬よ若者逝きて何んの国ぞ        金子兜太
   祖母ありき飲食(おんじき)お喋り日向ぼこ
   遠く雪山近く雪舞うふたりごごろ
   谷に猪眠むたいときは眠るのです
   河より掛け声さすらいの終るその日 

   夏柳おい舞の海出番だぞ        北の富士勝昭



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