2020年12月28日月曜日

林亮「野火にしか見ることのなき火の素足」(『歳華』)・・・


  林亮句集『歳華』(私家版)は、愚生自身が著者の来し方を把握しきれていないので、間違っていたら許していただきたいが、未確認の『曜』以前の句集と、さらに『曜』(1995年)、『遠国抄』(2011年)、『高知』(2014年)、『高遠』(2016年)、『瞭』(2018年)、に続く第7句集?ではないだろうか。また、句業の以前に詩集も上梓されているようである。こうした永年にわたる確実な歩みもさることながら、句の質を自身に問いながらのストイックな姿勢が覗われる句集である。最近は、「あとがき」にも、長文のものが多く、色々な情報を提供してくれるが、本句集の「あとがき」は短くシンプルである。全文を紹介しておこう。


  前句集「瞭」(平成三十年十二月刊)以降の約二年間の作品の中から、季節ごとに五つの主題を定め、一主題十五句として三百句を選んでみました。

 「草苑」からは多くのことを学びましたが、この句集により、「草樹」の会員の方々に何かをお伝えすることができるのではないかと思っています。


ともあれ、集中より、愚生好みに偏するが、以下にいくつかの句を挙げておきたい。


  北窓を開くに音のあらがへり        亮

  入れ替はる青さに空の花辛夷

  流れから外れはじめし花筏

  天涯に佇むための春日傘

  吹雪くしか散る術のなき雪柳

  茅の輪抜けそこにも月の懸かりけり

  蟻地獄から足跡の去りかねつ

  あるはずの後ろをなくす箒草

  どちらかがつくり花なる曼珠沙華

  猪垣の日よりも月に影の濃し

  まばらなる音に降り止む木の実雨

  姿なきところに鳴けり冬の虫

  ある丈を超えてはじめて木の葉髪

  個にはなき自在を得たる鴨の陣

  風花の不思議ひとりに多く舞ふ

  その色はなく似し色に冬椿

  駅の名につけてもみたき春隣


 林亮(はやし・まこと) 昭和28年、高知県生まれ。 



        撮影・鈴木純一「初氷ほうれん草の根が赤く」↑

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