2015年8月25日火曜日

大本義幸「三月の風よ集まれ釘に疵」(『俳句新空間』NO.4)・・・



『俳句新空間』NO.4、2015.夏号は、「鬼」と題する花尻万博の第2回攝津幸彦賞受賞後第二作の作品として「詩客」よりの転載作品。さらに筑紫磐井の「八月の記憶ー従軍俳句の真実」題する、この間の川名大とのやりとりが掲載されている。北川美美の編集後記には「『日盛帖』と名付けた作品詠に今号21名が参加」とあった。
その「日盛帖」の中から掲出した句が、大本義幸「三月の風よ集まれ釘に疵」の句である。直後の句にも「櫻三月死者たちは裸で歩く」が置かれているところをみると、東日本大震災についての詠とも読める。もちろんそうでなくてもよい。「釘に疵」が普遍性を獲得していよう。
「日盛帖」参加者の中から、一人一句を・・・・

  痴呆って症なのかしら琵琶熟れる      網野月を
  わたしには声がない世界がみえない     大本義幸
  願ひ事書いて燃やされ雲の峰        神谷 波
  藤の昼銹びしらんぷを地に置きぬ      坂間恒子
  いをかはづ降つてうるほふばかりなり     佐藤りえ
  くちびるにきんぎよのおよぐばすつあー     田中葉月
  風雨はげし骨離れよきほつけ食ひ      津髙里永子
  虹描く縄跳びの子ら基地超えて       豊里友行
  光化学スモッグの中誰もが汗         仲 寒蟬
  傘さして道遠くせり夏木立          中西夕紀
   田一枚植ゑて立ち去る柳かな(山の裾まで燕追ひきて)
  懲役の無期が有期に麦の秋         夏木 久
  生意気な目鼻となりぬ烏瓜          秦 夕美
  戦没の墓の月日や苔の花           福田葉子
  沢胡桃支那胡桃梅雨晴れ間         ふけとしこ
  戦前はいつの戦後ぞ養花天          堀本 吟
  曇天の残響豊か囀れる            前北かおる
  雨おとこ祭囃子を雨に乗せ          真矢ひろみ
  晩夏光ガラス細工の象溺る          渡邉美保
  ハクイキガ ホタルビトナリ ハハキトク     もてきまり
  死に顔のまま生きてゐる上司・部下      筑紫磐井
  梅干しの肉こそよけれ旅人よ          北川美美   






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