2018年8月2日木曜日

内田茂「旋盤のグリスの匂ふ極暑かな」(『管制塔』)・・・



 内田茂『管制塔』(ふらんす堂)、これも「第一句集シリーズ1」とあるから、先に紹介した田中葉月『子音』もシリーズ1で、どうやら同時・1の二冊刊行らしい。序「ただいま深化中」は大島雄作。その末尾近くに、

  日常生活や日常を取り巻く社会や自然をできるだけ今の言葉で詠みたいという内田さん。俳味と詩情の折り合いがついた句を求めてゆきたいともいう。それは私の作りたい句と同じだし、「青垣」もそのような句が目に付く。内田さんと「青垣」との相性はいい。これからますます深化するのは間違いないので、この『管制塔』の刊行を節目とし、更なる高みを目指してほしいと願って、紙幅に限りがあるので筆を擱きたい。

とある。また、跋のふけとしこ「働く人も故郷も」には、

 茂さんと出会ったのは「ふけとしこ俳句講座」。そこが俳句のスタートだったはずだ。
   汗拭ふ頭上一気にロープウェイ
   八月や重油の匂ふ街を過ぐ 
 などはごく初期の作品だが、すでに自分の世界を持つ人であった。

とも記されている。集名に因む句は、

  星飛んで管制塔に人の影       

同工の句に、

  最終便発つて星飛ぶ滑走路

もある。ともあれ、いくつかの句を以下に挙げておこう。

  村捨てし人の数なり鯉幟
  フェルメールの牛乳零す今朝の冬
  保母さんの胸がゴールや運動会
  溶接の火花転がる夜業かな
  狂言のやうに人逝く寒の内
  箱買ひの水積み上ぐる万愚節
  彫刻の猫に被せて夏帽子
  草野球落葉の所為にしてゐたり

内田茂(うちだ・しげる)、1953年、宮崎県生まれ。



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