2018年8月8日水曜日
青木澄江「秋深き影の中から猫が出る」(『薔薇果』)・・・
青木澄江第二句集『薔薇果』(角川書店)、序句に、
夢の世のゆめ森閑と澄む虚空 津沢マサ子
著者の名を一字詠み込んである。また、著者を十代の頃から見守ってきたという和泉香津子の帯文には、
中央アルプスと南アルプス。
屹立する嶺々に囲まれ。
天竜の流れがつらぬく
伊那の里。
幾年月。
風景として清爽のひとを
思う折ふしは、今も
私にとっての安堵である。
と記されている。集名の由来については、「あとがき」に、
句集名の『薔薇果』とは、梅、桃など子房と種子だけで出来ている果実を「真果」というのに対して、薔薇の実、林檎、梨、などのように花床、花軸、萼など子房以外の部分が子房とともに肥大して出来る果実のことで「偽果」ともいうらしい。私の句が真果と言えるものかどうかと考えた時、この句集名はとても相応しいものに思えた。
とある。そして「ここ十年来私淑しています津沢マサ子さん」宅には、山口剛が健在の頃、彼が上京するたびに、青木澄江も津沢邸に行っていたと思う。愚生もそのうち何度かはご一緒させてもらった想い出がある。ともあれ、いくつかの句を以下に挙げておきたい。
手花火のびくともしない闇がある 澄江
葱坊主男なら立ち尿せよ
秒針にゴールはなくて日の永し
悼 小宅容義
戻らない夏へ立木は立ち尽くす
悼 浅野毘呂史先生
呆然の視野あきざくら秋桜
悼 山口 剛
白の残像となりけり秋の蝶
冬たんぽぽ海辺で海の見えぬ場所
桜また桜さくらや桜古都
露の身をもってまみえる伎芸天
「薔薇果(しょうびか)」に縁のある句は、
薔薇の名はホワイトサクセス山に雪
冬帝の心臓ですよ赤い薔薇
である。
青木澄江(あおき・すみえ)1952年、長野県駒ケ根市生まれ。
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