「俳句新空間」NO.12(2020 初夏、発売・実業公報社)、筑紫磐井の「編集後記」には、
■紙面では、改元に伴い、俳句帖のスケジュールが大幅に乱れた。前号では、平成中の(最後の)俳句帖、本号は令和最初の俳句帖となるようにしたため、年一回の刊行となってしまった。■一方、BLOGの方では、俳句新空間参加の有志によるネット句会(皐月句会)や、俳句評論講座などの新しい試みを立ち上げた。俳人の活動が制約されているところから、従来とは違う活動の仕方を考える必要がある。どこの結社も、協会も、雑誌も従来のような、句会、イベントは出来なくなった。
とある。ともあれ、本号の「令和四季帖」(新作20句)には、多くの方々が参加されている。以下に一人一句を挙げておきたい。
春の句もだれかに影を落としゆく 青木百舌鳥
自動捲の止まってしまう春眠忌 網野月を
(×月×日 月をの忌日)
行間に魑魅(すだま)隠れる秋灯下 井口時男
貌よ鳥マトリョーシカの吐く嬰児 加藤知子
COVID19に付け込まれ花の冷え 神谷 波
生きてゐる男女の拾ふ桜貝 岸本尚毅
朧の夜生きているものゐないのか 北川美美
熊ん蜂父だと言って入ってくる 坂間恒子
全人類の舌かなかなの翅と化す 竹岡一郎
「まあだだよ」声おとし去る夕ひばり 田中葉月
乳くさき閨の甘さよ寒北斗 辻村麻乃
死ぬ死ぬと言ふな新茶を送るから 津高里永子
花辛夷ここまで来れば海見えて 仲 寒蟬
ゆく雁や握るものみな砂のごと 長嶺千晶
ポケットに妻の骨あり春の虹 中村猛虎
取り皿の深さまちまち蛇を呼ぶ 中山奈々
コロナビール手に大声の7回裏 夏木 久
少しずつ夜を閉じ込めて大氷柱 なつはづき
又の世へ薔薇は見頃と打電せる 福田葉子
野に焼いて草に南限木に北限 ふけとしこ
静かなときの蝶こはい貌 渕上信子
メーデーや戦後のはてに「マスク欲し」 堀本 吟
冬ざれの高崎市民ゴルフ場 前北かおる
仲さんが姫ちやんを飼ふ佐久の雪 松下カロ
風花や新宿騒乱いまむかし 真矢ひろみ
花水木いつか天へとさそひあひ もてきまり
野遊びの離ればなれに影動く 渡邉美保
春光おかさにきてこの午下がり 佐藤りえ
幸せになりさうなほど雪いつぱい 筑紫磐井
撮影・鈴木純一「リアルなるものの角張る五月かな」↑
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