「古志青年部作品集2020・第8号」(古志社)、作品講評は岩井英雅「『一物仕立て』と『取り合わせ』」。その中で、
(前略)「一物仕立て」は、ものの姿を写すにしても、自分の思いを述べるにしても五七五という字数に合わせれば誰でも簡単に詠めるが、そのため平凡で平板な句になりやすい。何よりはっとするような新鮮な発見があることが大事である。他方、「取り合わせ」は、季語以外の十二音の「ひとかたまりの事柄・情景・感懐」と季語との組み合わせだから、その事柄・情景・感懐に新鮮さがあるかどうかが一句の成否を分ける。さらに「ひとかたまりの事柄・情景・感懐」と季語との距離感の取り方が大切。(中略)
最後にまとめ。「一物仕立て」と「取り合わせ」には優劣の差はなく、そのどちらかを重視するかはそれぞれの作者の志向によるが、いずれの型を取るにしても、生き生きとした新鮮な感覚がすっきりした表現で詠まれ、一句がみずみずしさに溢れていることが求められる。
と述べられ、作者全員の句に好意の講評をしている。ともあれ、愚生好みに偏するが一人一句を挙げておきたい。
まだそこにあるやうな虹見てゐたり イーブン美奈子
凩が叩き落としてゆく星ぞ 石塚直子
歌ひ継ぐ者のオラショや星冴ゆる 伊藤 空
教室に私を置いて行く小鳥 佐倉 碩
勝独楽やぐらついて又たちなほる 関根千方(ちかた)
スタンドに初刷りごつと立ちてあり 高角みつこ
籐椅子にあにお頃の父居眠りて 高橋真樹子
亥の子餅かういふものといふでなく 竹下米花
すべり台夏のにほひの真ん中に 田村史生
白魚をのみ春色のあくびかな 丹野麻衣子
魂は大きく持ちてつばくらめ 辻奈央子
亡き姉のさしたる栞柿若葉 土谷眞理子
神々の丸き姿や福詣 西村麒麟
流鏑馬や弓は肘より張りつめ来 平野晧大
君らみな声が小さい鬼やらひ 藤原智子
大雨を直線で描く夏休 前田茉莉子
何落ちて来てもしづかや冬の水 三玉一郎
待ちきれず春を迎へにゆくところ 森 凛柚
台風の大きな円の外の虫 吉富 緑
全身を噴井となつて揺れてをり 渡辺竜樹
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