2021年2月21日日曜日

岡井隆「吉岡實さんと並びて畏れ多し『E/T』もこの秋の光に」(『書肆山田の本 1970ー2021』)・・・


 『肆山田の本 1970—2021』(書肆山田・200円)、挟まれた案内には、

  

 千代田区神保町東京堂本店2Fの一遇にて/『書肆山田の本1970-2021』ブックフェアを2月20日より開催予定です。詳細はあらためて東京堂書店のHPにてご確認いただければ幸甚です。


 とあり、扉には、


 深謝:書肆山田は、一九七〇年に創業者・山田耕一が岡田隆彦詩集『海の翼』を一冊目の刊行書としてはじめ、その後八〇年の吉岡実詩集『ポール・クレーの食卓』より鈴木一民が引き継いできました。いくつもの出会いに恵まれて、一冊一冊を紡ぐようにして本を作り続けることができました。なくてはならないはずの世界に立ち会えた幸運を思わないではいられません。ここに一文を寄せていただいた方々をはじめ、支えて下さった読者・著者の皆様に深く感謝いたします。


 とあった。寄せられていた小文は、すでに故人となられた岡井隆、入沢康夫を含め、健在の方々、60名を超える。中には、愚生が「俳句空間」(弘栄堂書店版)を出していた頃に、店頭書棚でお世話になった名古屋・ちくさ正文館書店の本店々長の古田一晴(当時は文芸詩歌書担当だった)もおられる。また、同じ名古屋の俳人でもある馬場駿吉、彼は想い出の三冊に、


これまでの書肆の刊行物で特に感銘深いものを絞るのはむづかしいが左の三冊を挙げておきたい。

加納光於・瀧口修造『《稲妻捕り》Elements』、若林奮『I.Wー若林奮ノート』、笠井叡『カラダと生命』。


を挙げておられる。せっかくだから、恥ずかしながら、愚生の駄文も以下に挙げて、書肆山田への感謝としたい。


 大事な二つの思い出がある。一つは、ぼくの『風の銀漢』、清水哲男と福島泰樹のお二方に跋をしたためていただいている。それは書肆山田の配慮だ。二つ目は、ぼくが制作に携わった高屋窓秋最後の句集『花の悲歌』(弘栄堂書店刊)。書肆山田の装幀のほとんどは亜令こと大泉史世、迷うことなくお願いした。貴公子・高屋窓秋に、これ以上はない装幀、その場で「雪月花美神の罪は深かりき 窓秋」と自署して下さった。

記憶に残る著書としては、瀧口修造『地球創造説』、清水哲男『打つや太鼓』、打田峨者ん『光速樹』を挙げたい。


 そして、今回のフェアーの企画の主、神田神保町・東京堂書店、文芸書担当の清都正明は以下のように記している。パンデミックな中、もし、お近くにお寄りならば、書棚に寄ってみて下さい。


今まさにパンデミックの只中ですが、自然災害、社会の混迷の前で人間一人ひとりは本当に小さく弱い存在であるということを想います。しかし、だからこそ、むしろそのことによって、これまで人間が連綿と紡ぎ繋いできた詩や書物の真の美しさ・儚さ・豊穣さと再び向かい合う機会に恵まれたのだと考え、今回フェアを提案いたしました。「小さな本屋」書肆山田の、その50年分の、宇宙まで届かんとする知の幾何かでも、皆様と共有したく存じます。

記憶に残る著書としては、藤井貞和『神の仔犬』(東京堂にに入社した日に積んであった本です)、山崎佳代子『ベオグラード日誌』、『カヴァフィス全詩』(「小さな本屋」でも世界と繋がることができる、という証拠のような本です)。


 とあった。


★閑話休題・・・谷佳紀「出会ったこと小石を手放したこと冬」(「外山一機の『俳句のまなざし』」東京新聞・2月20日付より)・・・
  

 今年の東京新聞の俳句時評蘭は「外山一機の『俳句のまなざし』、昨年の福田若之も良かったが、今年も期待できそうである。早速、ほぼ世間にはあまり知られていないが、稀有な俳人だった谷佳紀を取りあげている。


(前略)昨年末刊行された谷佳紀の遺句集『ひらひら』(東京四季出版)である。一九九九年から亡くなるまで(二〇一八年)の句を芹沢愛子ら八名がまとめたものだ。〈どこへでも走って天気の中にいる〉など、明るいトーンの句が並ぶが、しかし時折翳(かげ)りを帯びる瞬間がある。

 〈色々な静けさ友の死に樹の芽〉〈可愛(かわい)くなって柩(ひつぎ)に入れば雨の香〉ー七十五歳で亡くなった谷は十代から半世紀にわたり俳句を書き続けてきた。(中略)

 しかしいま、当時の句を辿(たど)りなおすなかで、晩年の谷の行き当たっていたものがようやく見えてきた気がする。〈母の遺骨青葉と仲のよい白さ〉〈人類のつとめはもうはたしました時雨〉。句友の死、父母の死、東日本大震災ーそれらを経て、それでも生き延びていること、それでも俳句を読み続け書き続けていること。その意味を自らに問うていたのではなかったか。



          撮影・鈴木純一「如月の麺麭の略取も珈琲と」↑

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