乱歩読む窓のガラスに蝸牛 風天
赤とんぼじっとしたまま明日はどうする
の句がある。先般の「俳句界」(文學の森)一月号では、特集「渥美清の俳句」(俳号・風天)があった。そこでは、かつて俳句仲間だった浅井慎平「旅鞄重きは春の深さかな」、矢崎泰久「風と共に去りぬ」などが想い出を語っている。
ところで「雲」は順調に号を重ねている。愚生は、一昨年の、現代俳句通信講座では、一緒に講師を務めさせてもらった。年一回行われる吟行会は中止だったが、久しぶりに彼女にお会いした。「雲」の作品欄には、愚生が何十年もお会いしていないが、当時から注目していた作家の作品も読める。懐かしいし、その健在ぶりを遠望している。ともあれ、以下に同誌本号より一人一句を挙げておきたい。
帰心ふと水辺を歩く冬の鷺 大木あまり
鯨骨のしらじら熊野冬はじめ 大西健司
人の世の病はるけし冬銀河 脇本公子
去年今年生涯飲まぬ般若湯 加賀谷三棹
朗人逝き秞子も去りて年惜しむ 劒物劒二
青梅にはへそ饅頭屋冬ともし 柳堀悦子
総持寺の屋根の力みも冬構へ 織本瑞子
「一人で来たの」と医師の問ふ小六月 和気千穂子
白露を作りて遊ぶ風の船 小林深春
焼鳥の串で時局を解説し 齊藤至旦
追憶の唐傘通学初時雨 高堰明光
鳳仙花杖無き日々の卒寿なり 高堰レイ子
うなづきて湯豆腐となる夕餉かな 堀江いさを
干支頭未知の八起は初明かり 宮﨑空拳
藤十郎逝き顔見世の遠かりき 石田 眞
寒晴れやフジコへミングカンパネラ 川嶌ますみ
祖父ありし日の外套の重さかな 伊藤 眠
芽夢野うのき「冬枯れの髭にひっつき枯れすすむ」
0 件のコメント:
コメントを投稿