2021年3月10日水曜日

中内亮玄「蚊は矢 (世界最短句)」(「月鳴」第2号)・・・

 

「俳諧旅団 月鳴」第2号(狐尽出版・月鳴会)、表紙絵は、安彦良和。じつに短い編集後記には、


 新しいことをはじめようとすれば、それがたとえ良いことであろうとも、波風は立つものだ。いいぞ。風がなければ、船は進まないじゃないか。(亮)


 とある。また、巻末に【俳まくら】(第23話~第56話)、2014年(平26)1月~翌年12月、著者 秋山狐哮(あきやま ここう)「日刊県民福井」(中日新聞系列)が、掲載されているが、ほとんどが、俳句にまつわるエッセイと句集評に費やされている。一回の分量は限られているので、長文になると、連載になっている。なかでも、注目したのは、「第25話 吉田透思朗」が3話あったこと。その1には、彼についての評論が書かれていないことを嘆き、


(前略)透思朗氏の第一句集は『仮面の群』であるが、第一句集から第二句集を出す十年の間に師と仰ぐ金子兜太に会い、「観念の具象化」という作句理念を獲得している。そのため、彼を探るのに第二句集『光るこけし』を読み解いていきたい。

 鷹蒼く翔(た)つ春寒の洋酒棚    透思朗   (中略)

                       *注:吉田透思朗の吉は土に口

 黄葉濃しかつて人間魚雷の日々    透思朗

透思朗は戦争を経験している。身長178センチ体重90キロの巨漢は、当時、自ら飛行予科練に志願した。あいにく視力が悪く飛行機には乗れなかったが、戦争が終わってみれば結果として良かったと思う。(以下略)

 と記されている。愚生が知っているのは、「頂点」の同人だった吉田透思朗だが、今は、すでに「頂点」も無く、透思朗、兜太も鬼籍に入られている。他に三回分の紙面を割いているのは、『宇多喜代子集成』であった。ともあれ、以下にいくつかの句を挙げ、創刊号に寄せられた祝辞が、自筆のまま、写真で乗せられているので、それをいくつか再掲載しておこう。

                 黒田杏子↑
                 石寒太↑
                 筑紫磐井↑ 
                 岸本尚毅↑


    師を思うひとつにあつきてのひら忌       中内亮玄
    枝雀胸毛吹かれて花吹雪            猪狩鳳保
    紅葉より淋しいと言いまた歩く        塩谷美津子    
    若僧のかりんと痩せて花の堂          林 和清
    十二月八日ただ轟音・轟音          ナカムラ薫
    首里炎上蹴出しのままで手を合わせる      植田郁一
    足音を聞き分けている木の芽和え        山田冨裕
    内海の四温やなだらかな生死          石田秋桜
    流星が胸に飛び込むまで開く         佐藤日田路
    考える葦に火を付けわれら黒し         成井惠子
    影踏むは別れの合図狂い花          らふ亜沙弥
    ラマーズ法で乗り切る古稀の溽暑かな      若林園枝
    ライオンに止まると見せて黒揚羽       惣次美都子



     芽夢野うのき「ほのぐらき辛夷の色に朱を貰う」↑  

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